富士フイルムXマウントのF1.2大口径レンズ「XF56mmF1.2 R」が登場した。35ミリ換算84ミリ相当のこのレンズはたたずまいも重厚でフォトグラファーを撮る気にさせてくれる。今回はFUJIFILM X-T1に装着して使用。若干フロントヘビーに感じたものの、取り回しはまったく苦にならない。ただ絞りリングのトルクが軽すぎるので、意図しない動きをしてしまい、Aマークから外れたりしがちなので使用には注意が必要だ。
写りは絞り開放から実にシャープ。安心してF1.2の世界を堪能できる。クリアでヌケのいい描写はどんな被写体でも美しく撮影できるはずだ。特に女性ポートレートはベストマッチではないだろうか。みずみずしい肌の質感と繊細な髪の毛の表現は他のレンズの追随を許さない。X-T1のフィルムシミュレーションと組み合わせれば、豊かな色再現と階調表現を手にすることが可能だ。
晴天の木陰でしゃがんだモデルをF1.2絞り開放で撮影。髪や肌のトーン、ストライプ地ワンピースの質感はとてもF1.2の描写とは思えないほどだ。背景のボケ味も自然で好感が持てる。
陽光を浴びる美しい桜を開放でシューティング。イメージ通りにきれいに背景がボケ、主題の桜がスッと浮かび上がった。
グッと絞ってもこのレンズは安心だ。コントラストがより高まり、メリハリのある画になった。建物壁のテクスチャー感や、非常階段のサインなどまでしっかりとした描写である。
木立の中でモデルの瞳にフォーカスしてシャッターを切った。まつげを中心に顔周辺はとてもシャープで、その周辺部はいい感じにソフトなボケに包まれ始める。緑の背景が絞り開放だけあって完全に溶けたような描写になっている。こういうシチュエーションでは積極的に開放で撮影できるレンズだ。
光り物や液体系の描写もこのレンズは得意だ。噴水を1/4000秒でとらえたカットだが、噴出する水の立体感と飛沫の細かさが実に良く表現された。
使い込まれた下駄。すり切れかけた鼻緒、すり減った下駄の歯までリアルに写すことができた。最短撮影距離は0.7メートルだが、雰囲気を生かしたブツ撮りやテーブルフォトにもこのレンズは有効だろう。
薄暗い路地をモデルに早足で歩いてもらった。コンティニュアスAFで撮影したが、オートフォーカスは大きく外すことなくモデルをとらえ続けた。髪の毛のふわっとした感じ、ショールの質感、背景の色合いとボケまで実にいい感じだ。
日影の小川に立つ桜の古木を撮影。あえて絞り開放で撮影したが、とてもシャープにとらえられて驚いたカットだ。背景は若干二線ボケの傾向があるが、桜花のひとつひとつの描写は素晴らしいものである。
薄暗い人工照明の下でISO3200、絞り開放で背景のボケを意識して撮影。さすがに高感度で肌の描写は難しいものがあるが、暗所で明るいポートレートを撮影可能にしてしまうのがこのレンズだ。中望遠が好きで明るく開放から使えるXマウントレンズを待っていたユーザーはこのレンズを手に入れない理由はないだろう。
(編注:本記事では一般的な撮影状態での利用を念頭としているため、人物撮影にレフ版などは利用しておりません)
(モデル:萩原誠子 オスカープロモーション)
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