インタビュー
» 2014年07月07日 10時50分 UPDATE

「カシオのカメラはカメラではない」 落ち込み続くコンパクトデジカメ市場でカシオ計算機が打つ、次の一手 (1/2)

右肩上がり成長を見込めないデジカメ市場において、各社の試行錯誤が続いている。多くは高級モデルの投入に活路を見いだすなか、事業撤退も検討したというカシオの打つ、次の一手は。

[渡邊宏,ITmedia]

 カメラ本体のディスプレイで、撮影した写真をその場で確認する。

 いまとなっては当たり前のスタイルを一般向け製品として初めて実現したのがカシオ計算機の「QV-10」だ。そのQV-10登場から20年近い年月が流れ(QV-10は1995年3月発売)、カメラを取り巻く環境は大きく変化している。

photo 「QV-10」の企画からカメラ事業に携わり、現在はデジタルカメラ部門のトップを勤める中山仁氏(同社 執行役員 QV事業部長)

 カメラのデジタル化に始まり、コンパクトデジカメの普及、ミラーレス機の登場、大型センサー搭載による高画質化、4K映像対応などトピックを挙げればきりがない。なかでもカメラ付き携帯電話(スマートフォン)の普及はデジタルによって写真を身近にした一方、コンパクトデジカメの市場衰退を招いた出来事とも表現できる。

 特にコンパクトデジカメを主力とするメーカーにとってスマートフォンとの競合は大きな問題で、多くがレンズ交換式と高級機コンパクトを中心にする戦略にかじを切っている。QV-10を世に送り出したカシオ計算機も例外ではないが、2013年に投入した「EX-10」は高画質を追求するより、デジタル処理によって“好画質”を訴求するなど、独自の提案を続けている。

 右肩上がりの成長ラインを見込めなくなったデジタルカメラ事業において、カシオはどのように存在感を発揮していくのか。「QV-10」の企画からカメラ事業に携わり、現在はデジタルカメラ部門のトップを勤める中山仁氏(同社執行役員 QV事業部長)に聞いた。

カシオのカメラは、カメラではない

――「QV-10」から20年近い年月が過ぎ、カメラを取り巻く環境は大きく変化しています。

中山氏: QV-10において私は商品企画を担当しましたが、QV-10のコンセプトは「ビジュアルコミュニケーション」でした。銀塩カメラのデジタル化という意識は当時からなく、それだけに撮影した画像をその場で見る・見せ合うことができる背面液晶の搭載にはこだわりました。

 銀塩では不可欠だったプリントをせず、「写真を液晶画面で見る」ことを一般化させたいというのが当時の意図で、それはいま、スマートフォンで実現している。なので、ある意味QVの使命は完了したとも感じています。

 ただ、1995年から2000年にかけてのデジタルカメラ業界を思い起こすと、当時は銀塩に追いつくこと、追い越すことが大きな潮流で、具体的には画素数競争やズームレンズの倍率アップが驚異的な速度で進んでいました。そして、その流れに私たちも取り込まれてしまいました。

 そのなかで私は、冷静にカシオのデジタルカメラ事業を見つめ直したいと、研究開発の部署に異動しました。そしてたどり着いたのが、カシオのデジタルカメラは「常に持ち歩ける」ものであるべきという考えで、その考えに基づき、カードサイズで超薄型の「EX-S1」(2002年)を開発し、ブランドも「極限まで薄い」を意図する「EXILIM」を冠することとしました。

 「薄型」のくさびを打ち込むことはできましたが、カメラ的な高機能化・多機能化に対する市場の要望もあって、光学3倍ズームを搭載した製品“EXILIM ZOOM”「EX-Z3」を製品化しました。「超薄型でなければEXILIMではない」という意見もありましたが、結果としてEX-Z3はヒットし「EXILIM」のブランドが浸透したと思います。

 EXILIMブランドを開始した当時は、「携帯カメラ」の進化が著しい時期でした。カメラ業界としては「カメラの敵ではない、競合しない」という認識でしたが、私たちにとってのカメラはビジュアルコミュニケーションツールでしたので、強い危機感があったことを覚えています。

 このような背景もあり、「銀塩カメラにできないこと、携帯電話にできないこと」を製品化すべく試行錯誤しました。写真も動画もというコンセプトの「EX-P505」などさまざまな取り組みと製品化を行いましたが、この取り組みは後に「HIGH-SPEED EXILIM」シリーズとして、結実することとなります。

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