コラム
» 2014年09月12日 08時46分 UPDATE

像面位相差AFってどうなの?:「iPhone 6」のカメラはFocus Pixelsと手ブレ補正技術に注目

「iPhone 6」と「iPhone 6 Plus」は、「iPhone 5s」からの進化点が多いが、カメラに限ってみてもかなりの機能強化が図られる。注目のFocus Pixelsと手ブレ補正技術を中心に、iPhoneのカメラにどんな変化がもたらされるか考察する。

[荻窪圭,ITmedia]
iPhone 6 Camera iPhone 6 Plusのカメラ

 iPhoneといえばカメラ。世界的な写真共有サイト「Flickr!」でもっとも使われているカメラとして有名であり、各社のスマホが1300万画素は当たり前、ソニーに至っては2000万画素に達するイメージセンサーを搭載している現在、最新モデルではカメラ機能をどう強化してくるか。そこに注目が集まっていたのである。たぶん、集まってた。少なくともわたしはめちゃ注目してた。

 そしたらやはりアップルはアップルだった。

 iPhone 6登場前に、そのカメラ機能のキモについてちょっと紹介してみたい。目の付け所がすごくいいのだ。清く正しいスマホカメラはこう進化すべき、って見本のような……といったら言い過ぎなんだろうけど、それに近いスペックアップを見せてくれたのだ。

iPhone 6 Camera 発表会で披露されたiPhone 6のカメラの特徴

 実際に撮ってみての評価は発売以降にするとして、まずはスペックからわかるポイントを紹介するのである。発表会の映像の27分45秒くらいから見始めるとカメラの説明が確認できる。

iPhone 6 Camera アップルのWebサイトで公開されているiPhone 6のカメラの説明。Focus PixelsによりAFが高速になるほか、手ブレを抑える仕組みが用意されるのに注目したい

画素数は800万画素据え置きだが!

 イメージセンサーはの画素数は800万画素で、「iPhone 5s」から増えていない。画素数を上げてこなかった。スマホに搭載できるカメラのスペースやコストは限られてる。イメージセンサーの画素数を上げると数字上のアピールにはなるが、800万画素を1600万画素にしても、それに見合うだけのレンズのクオリティを確保できるか、それで画質は倍になるかというとはなはだ疑問なのだ。

 スマホのカメラに求められているのは画素数なのか。多くの人がスマホのカメラで失敗しているのはどこか。それは画素数で解決するのか――。

 しないのである。

 なぜなら、多くの人が失敗しているのは――たぶん、ね。少なくともわたしが多くのスマホカメラで撮った写真をネットで見たり、自分でいろいろなスマホで写真を撮った経験からの類推だが――ちょっとでも暗い場所だとすぐ手ブレする、ピントが背景に抜けちゃってメインの被写体がボケてる、の2点だ。

 機種によっては(iPhoneはその点優秀な方だ)、顔検出機能がちゃんと顔を見付けているのに、撮ってみたらピントが背景に合ってた、なんてよくあるもの。

 他にも使っててAFが間に合わなくてシャッターチャンスを逃すとか、感度を上げたときの画質がイマイチとかあるけれども、ブレとピンボケが非常にひっかかる。

 そこに手を付けてきたのである。

Focus Pixelsで速くて正確なAFを

 まずはAFだ。そこにアップルは「Focus Pixels」という技を投入してきた。文字通り考えると「フォーカス用の画素」となる。

 いわゆる「像面位相差AF」(あるいはそれに近い技術)なのではないかと推測する。

iPhone 6 Camera Focus Pixelsという名称の技術でAFを高速化している。いわゆる像面位相差AFに近いものではないかと思われる

 スマホや多くのコンデジは「コントラスト検出AF」という手法を使ってピントを合わせる。近距離から遠距離までピントを少しずつずらしながらレンズを動かし、一番コントラストが高いところ(明暗差がはっきりしているところ)を採用するという手法だ。これだと、メインの被写体が影になってたり逆光になってたりした場合、メインの被写体より背景の方がコントラストが高いと判断し、背景にピントが合っちゃいやすいし、AFの高速化が難しい(とはいえ最近はメチャ速くなっててその面でのデメリットは減ってる)。

 そこで、イメージセンサーの一部の画素をピント合わせ用に使うのが「像面位相差AF」だ。位相差AFというのは距離が離れた(といっても何μmの距離だけど)2つのセンサーを使い、両者の差で被写体までの距離を測って素早くそこにピントを合わせるという手法。一眼レフは位相差AF専用のセンサーを持っていて、それでピント合わせを行っている。その位相差AF用センサーをイメージセンサーの表面にたくさんちりばめることで、像面で位相差AFを行うから像面位相差AFという。

 ミラーレス一眼などで最近使われ始めており、たとえばソニーの「α6000」やニコンの「Nikon1」などはそのおかげでAFがめちゃ速い。

 アップルもおそらくその技術を使っている。デモを見る限りでは、一部の画素が「半分だけフォーカス用のセンサー」になっていて、その信号を元にすばやくピントを合わせるのだ。

iPhone 6 CameraiPhone 6 Camera Focus Pixelsを説明するスライド。このデモからも、おそらく像面位相差AFを採用していると考えられる

 コントラスト検出AFと違い、レンズの動きが最小限で済むので高速化しやすいのである。フィリップ・シラー氏は「約2倍高速になる」とプレゼンしていた。使ってみないと分からないけど、うまくすればめちゃ撮影が快適になるはずだ。

光学式手ブレ補正と電子式手ブレ補正の併用

 もう1つの注目は「手ブレ補正」。

 iPhone 6にはデジタル技術による手ブレ補正を、iPhone 6 Plusにはそれに加えて光学式手ブレ補正を組み込んできた。

 前者は最近、ほとんどのデジカメが採用している技術。ソニーの「手持ち夜景」モードなどがそれ。「複数枚の写真を超高速連写して、それらを合成してブレのない写真を生成する」技術。高速連写+合成技の代表だ。

 iPhone 6と6 plusはそれを自動的に行う。4枚を連写して、ブレがもっとも少なくなるように合成するのだ。さらにこれを使えば暗所でのノイズも減らせる。

 ちなみに、以前からiPhoneが搭載しているHDRも原理は同じ。明るさを変えながら3枚を高速連写してそれぞれおいしいところを合成しているわけで、それのバリエーションだ。

 iPhone 6 Plusにはさらに「光学式手ブレ補正」が加わった。

 光学式手ブレ補正とは、カメラを持つ手のブレを検知して、そのブレと逆方向にレンズ(あるいはイメージセンサー)をちょっとだけ動かして、ブレをキャンセルするという技術。

 iPhone 6 Plusの光学式手ブレ補正は、Appleのビデオを見る限り、レンズ+センサーのカメラユニットごと動かしてブレをキャンセルするようだ。

iPhone 6 Camera 光学式手ブレ補正の仕組みを解説する模式図。カメラユニット全体を動かしてブレをキャンセルする

 いまやデジカメではほとんどの機種が搭載する必須の機能だが、スマホではシャープが一時期採用していた程度で、まだ珍しい。やはりコストや機構サイズの兼ね合いだろう。どうしても大きくなるから。

 でもiPhone 6 Plusは内蔵するジャイロスコープやM8プロセッサと組み合わせた光学式手ブレ補正を搭載してきた。どのくらい効くかは試してみないと分からないが、従来のカメラに比べて室内での撮影が決定的に多いし、いい加減な持ち方で撮ることが多いのがスマートフォンというもの。だからこそ大事なのだ。

 この手ブレ補正技術と前述の像面位相差AFの組み合わせで、iPhoneが苦手だったシチュエーションの多くが改善され、失敗写真の8割がなくなる(特に根拠のない数字ですが)に違いない。

 さらに動画関連では、240fpsのスローモーションビデオ(今までは120fps、つまり1/4だったが、今回は1/8になった。この差はけっこう大きい)、タイムラプス撮影、明示的な露出補正など、iOS 8で機能強化された分も含めて、カメラ関連にはかなり力が入っている。

 iPhoneのカメラの良さは、機能がたくさんあるけどその分あれこれ自分で設定しなきゃいけなくて難しい、ではなく、機能が増えてもそれを自動的に適材適所で適用してくれるから、使う側は気楽にオートのまま撮ってればOK、という、いい意味でのシンプルさ。それを忘れずに進化してくれていると思う。

 実際、iPhone6/6 plusで撮れる写真はどうのか。従来は苦手だったシチュエーションでもしっかり撮れるようになったのか。他のスマホのカメラ機能に比べるとどうなのか。

 その辺は実機登場以降のお楽しみ、ということでしばし待つべし。

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