コラム
» 2014年10月07日 23時26分 UPDATE

photokina 2014の注目製品を振り返る

今年は2年に1回のphotokinaイヤーということで、このタイミングでさまざまな新製品が登場した。そんな中でも現地の取材で特に興味深かった製品をまとめて紹介しよう。

[小山安博,ITmedia]

 ドイツ・ケルンで2年に1度開催される、世界最大の写真関連見本市「photokina 2014」が今年も閉幕した。毎回、これを機に発表される意欲的な新製品も多く、今年も注目製品が数多く登場した。

photokina 2014 photokina 2014の会場、ケルンメッセ

パナソニックの“CM1”は、「デジカメにこだわった」ことが注目

 photokina 2014の会場で、最も注目された企業の1つがパナソニックだろう。高級コンパクトの「LUMIX DMC-LX100」や「LUMIX DMC-GM5」はもちろん注目度の高い製品だが、中でも特に注目を集めたのは「LUMIX DMC-CM1」の存在だ。

LUMIX DMC-CM1 LUMIX DMC-CM1。表側から見ると単焦点コンパクトデジカメ
LUMIX DMC-CM1 一方で、裏側は縦に持つとAndroidスマートフォンにしか見えない

 CM1は、スマートフォンOSのAndroidを搭載し、4.7インチという大型の液晶モニタを搭載したカメラで、一見するとその姿はスマートフォン。しかし、スマートフォンのカメラとしては大型の、35ミリ換算で28ミリ F2.8の単焦点レンズを搭載。撮像素子には高級コンパクト並みの1インチセンサーを採用している。

 通信機能では、LTE/3Gの携帯通信、無線LAN、Bluetoothといたスマートフォンにある機能を備えたほか、音声通話にも対応しており、カメラともスマートフォンとも言える製品だ。

 過去にも、「カメラのような外観」の携帯電話はあったし、Samsungが「GALAXY Camera」といった高倍率ズームレンズ搭載スマートフォンも発売している。ポイントとしては、「1インチセンサー」「大口径の単焦点レンズ」「ヴィーナスエンジン」、そして、「パナソニックはカメラとして開発している」という点だ。

 パナソニックには携帯電話やスマートフォンの開発を担うパナソニック モバイルコミュニケーションズ(PMC)があったが、同社のスマートフォン撤退にともなって、開発チームがLUMIXチームに移行。「同時期にPMCとLUMIXチームで開発していたAndroid搭載製品」が融合した結果、今回のCM1が登場したという。

 「パナソニックがスマートフォンに再参入」といった言い方もできるかもしれないが、パナソニックに話を聞くと、「あくまでデジタルカメラ」という。

 撮影した画像を素早くSNSなどに投稿するのに、通信機能、特に高速なLTE通信に対応していることが重要で、それを行うためには、Androidを採用するメリットがある。それにともない、チップセットとしてQualcommのSnapdragonを採用したが、画像処理に関しては、ハードウェアのヴィーナスエンジンを搭載している。これがポイントで、カメラはヴィーナスエンジンが、UIや基本的なOSの動作はSnapdragonが受け持つ、というデュアルチップ体制になっている。

 Snapdragonとヴィーナスエンジンという2つのチップが受け持つ機能を切り分け、カメラが起動すると最優先でヴィーナスエンジンが動作し、その背後でもSnapdragonがOS動作を受け持つといった処理が難しかったそうだ。

 このカメラの動作を従来通りヴィーナスエンジンが受け持つ点でも、やはりCM1は「カメラ」なのだろう。カメラは一見すると1つのアプリとして実装されているように見えるが、ヴィーナスエンジンが処理を担当しているため、「LUMIX風のカメラアプリ」ではない。「単にAndroidスマートフォンのレンズとセンサーを良くした」のではなく、ちゃんと「カメラ」なのだ。

 Leica認定を受けた単焦点レンズで、しかもレンズ固定なので、1インチセンサーに最適化されて画質も良好のはず。少なくとも、プリントアウトされた作例や、ディスプレイに表示された撮影画像を見る限りは、「スマートフォンとして」というより、「デジカメとして」十分な画質を実現しているようだった。

 1インチセンサーを搭載すると、当然レンズは大型化する。スマートフォンのようなデザインとサイズを実現するためには、レンズは単焦点しか選択しようがない。逆に、OSとしてAndroidを搭載したカメラとして開発するなら、カメラとして必要なサイズ感で高倍率ズームを搭載してもいいだろうが、今回はデザインやサイズをスマートフォンに近づけているため、やはり単焦点にならざるをえない。

 その分、画質には期待できる。画角は、「テーブルの上の食事」を撮影することも想定した28ミリ。日本人は特に多いが、世界的にも食事をスマートフォンで撮影する人は多い。F2.8という明るさも、サイズとのバランスを考えるとちょうどいいだろう。

LUMIX DMC-CM1 カメラ起動時はヴィーナスエンジンが処理を担う。CM1はあくまでもデジタルカメラだという
LUMIX DMC-CM1 大型のシャッターボタン、ボリュームキー、電源ボタンなど、カメラとスマホの要素が混在する

 価格は欧州で899ユーロと、難しい値付け。高級コンパクトデジカメとしても高いし、スマートフォンとしても高い。パナソニック自身も数を求めてはいない、というより、爆発的に売れるとは考えていないようだが、こうした製品を、しかもパナソニックが開発したというのはやはり驚きだ。

 photokinaでCM1が注目された理由は分かる。デジカメ業界では、通信とカメラの融合は1つのテーマだ。スマートフォンによってコンパクトデジカメ市場が大きく縮小し、SNSなど画像をインターネットに投稿するという文化が広まっている。それに応えるように、デジカメの画像をスマートフォンに送信するソリューションはいくつか出てきている。今までは、無線LANを使って転送しているが、設定が面倒だったり、送信が安定しないなどの問題もある。

 その点、CM1はデジカメ自体にLTEや無線LANの通信機能を搭載。スマートフォンと同じやり方で画像を投稿できるデジカメとして、他のデジカメメーカーからも注目を集めている。やはり1/2.3インチといった小型センサーでもなく、小さなスマートフォン用レンズでもなく、ソフトウェア的な画像処理でもなく、「まず、デジカメである」という点が注目されているのだろう。

デジカメとスマートフォンを結ぶ技術

 この「デジカメとスマートフォンの通信」ではほかにも興味深いソリューションがある。Samsungのミラーレスカメラ「NX1」は、一眼レフカメラのようなスタイルのレンズ交換式カメラで、カメラとしての機能も意欲的だが、無線LANとBluetoothを組み合わせた画像データの送信機能が面白い。

Samsung NX1 Samsungのレンズ交換式ミラーレス一眼「NX1」
Samsung NX1 スマートフォンとBluetoothで常時接続し、縮小画像をスマートフォンに送ることで、撮影後すぐに写真の投稿などを可能にしている

 これは、Samsungのスマートウォッチ「GALAXY Gear」の技術を応用したものだろう。要は「いちいち接続するのが面倒なら、常時接続にしてしまう」という考え方で、カメラとスマートフォンをBluetoothで接続。低消費電力のため、常時接続し続けてもバッテリー消費は少なく、撮影時には、縮小画像をBluetoothでスマートフォンに自動的に送信する。いわゆるBLE(Bluetooth Low Energy)の機能を活用したものだ。

 実は、NX1のスペック表には「Bluetooth 3.0」との表記がある。チップ自体はBLE対応ながら、BLEの仕様を満たす省電力化が難しかったため、らしい。そのため、使い方としてはBLEと同じやり方だが、BLEの基準より少し電力消費は多めのようだ。とはいえ、無線LANなどに比べれば省電力なのは間違いない。

 Bluetoothの通信速度は遅いが、縮小画像ならすぐに送信できるため、いちいち転送作業を行わなくてもいい。撮影して、スマートフォンを取り出せば、もう画像が保存されているので、そのままSNSなどに投稿できる。元の大きな画像が必要な場合は、そこから選んで無線LANを使って転送すればいい。このあたりは、Samsungのスマートフォンチームとカメラチームが同じ事業部内に統合された点が生かされているのだろう。

 米Relonch Cameraが開発中というiPhoneケース型デジカメも面白い。ケースに45ミリの単焦点レンズとセンサーを組み込み、カメラの操作や画像の保存にiPhoneを使うというアイデア商品で、UIをすべてiPhoneに任せて、カメラを外付けにしている。ソニーのレンズスタイルカメラ「QXシリーズ」と似た考え方だが、ケース型のため、iPhoneとはLigthning端子経由で接続され、安定した高速な画像転送ができる点はメリットだろう。

Relonch Camera 写真左がiPhone 5sにケースのように取り付けられる45ミリの単焦点レンズ付きカメラ「Relonch Camera」。右はプロトタイプ
Relonch Camera Relonch Cameraの裏側はiPhone。操作や保存はiPhoneアプリで行う

 今回のphotokinaでは、「スマートフォンとの連携」は1つのテーマになっていた。まだまだ、新しい提案は少ないが、従来のカメラメーカーだけでなく、新興メーカーが現れる端緒になりそうだ。

 カメラ業界に新風が巻き起こっている。2014年のphotokinaは、そんな印象だった。

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