城といえば石垣。小諸城の石垣がまた野面積み(石を加工せず、自然な石を積み上げたもの)だから、石の1つ1つに味わいがあってでこぼこしてて非常に風情がある。その上ほどよく苔むしている。となれば石垣を絡めて撮りたくなるではないか。
野面積みならではのでこぼこにたまった落ち葉に広角でぐぐっと寄ってみた。
落ち葉を狙うときはピントの山をどこにするかちゃんと考えることと陽射し。まずは日陰の石垣で、ピントを手前に合わせ、後ろに徐々にぼけていく感じで狙ってみた。すると渋い感じになる。
逆に日なたの石垣で華やかに陽射しを浴びた落ち葉へと移動。背景に紅葉の木が入るよう、石垣にへばりつく感じでカメラを構え、絞りを開いて中望遠で狙う。マイナスの露出補正をかけて。
同じ石垣でも日の当たり具合で雰囲気が全然違うのだ。特に野面積みは自然の石を組み合わせているので陰影が強く出てよい。
ちょっと趣向を変え、同じ位置でピントを背景の紅葉に合わせてみる。すると手前の落ち葉が大きくぼけて苔の緑とともに色のアクセントになり、主役は野面積みの石垣&紅葉に変わる。
どっちがいいという話じゃなくて、同じ位置から撮っても主役を変えるだけで写真が大きく変わるので、そこを意識して狙いましょうということ。だから写真は面白いわけである。
さらに絞りをぐぐっと絞ってピントの合う範囲を広げてやると、また違うテイストの写真になる。
石垣があったら上るべし。
石垣を上り……もちろん忍者の如く石垣をよじ登ったわけじゃなくて、ちゃんと階段や坂を上がるのだが、その上から見下ろす風景もまた城址ならでは。
石垣の上から超広角レンズで1枚。フルサイズの一眼レフに12mm。
紅葉を撮りに行くときは必ず超広角レンズを1本持つようにしてる。真っ赤な紅葉の姿をおさめるとき、ちょっと離れて普通の広角や標準レンズで撮るとちょっと客観的な絵になる。
でも超広角にして木の真下から見上げると、空全体が紅葉で覆われたような、広がりのある写真になる。
この迫力は超広角じゃないと出せない。
広角だと広い範囲が写るので色とりどりの紅葉を一気に写し込むこともできる。紅葉の季節は赤黄緑青と多くの色を閉じこめられる。それがよい。
にしても天気がよすぎたせいで色鮮やかにもほどがある、という感じですな。
小諸城編の最後は、貫禄のある古いモミジの大木。ふと近寄ってみると、太い幹から5本の指が生えているようで、その迫力を狙ってみようとぎりぎりの真下から、幹がシルエットで入る感じで撮ってみた。
今回、一眼レフとミラーレス一眼を持って行ったのだけど、モニタがチルトするミラーレス一眼はこういう無茶なアングルで撮りたいときによい。
これはよい大木でありました。
紅葉の撮り方はいろいろあるけれども、やはり最終的なポイントは「色と光」。
紅葉の「赤」をくっきり鮮やかに撮りたいときは黒い背景を探すべし。陽射しがあたるモミジの奥におあつらえむきに逆光で黒くなった木の幹が。
こうしてみると、背景が黒い方が明らかに赤が映える。
そこで望遠ズームにつけかえ、背景が黒一色になるようカメラを縦位置にして切り取ったのがこちら。見ての通り赤と黒。黒は赤をより艶やかにするのだ。
赤が明るくなりすぎて色がとばないよう、マイナスの補正をかけてやるのがポイント。逆に、背景を黄色にすると、爽やかな赤になる。
もうちょっと色の話を。
紅葉は「赤」だけじゃない。緑から黄色、黄色から赤と変化していくグラデーションも楽しむべし。
でも快晴の元ではちと色がまぶしい。グラデーションは曇っている、あるいは日陰でちょいとじとっとした侘びた場所の方がいいかも。
個人的にはこんなしっとりした紅葉も好き。
晴れた日は晴れた日ならではの、どんよりした日はどんよりなりの絵を見せてくれるので、天気が悪いからといって残念に思う必要はないのだ。
さて色を際立たせるのが光。しかも冬至が近くなると太陽の位置が低くなり、ちょっと逆光気味で撮ろうと思うとすぐ太陽が入り込んでくる。
だったら太陽さんにも一役買ってもらおう。
わざと葉の隙間から太陽が顔を出すアングルで裏から狙ってみた。逆光ならではの透明感と、葉の重なりが醸し出す色の重層感がいい。
冒頭で書いた「紅葉は裏から撮れ」である。太陽の位置によっては派手にフレアが出てコントラストが低下ちゃうけど、それもまたよしといえばよし。
最後に小諸城址の崖の上からみた千曲川と秋の山々をどうぞ。
あ、ちなみにこれ、RAW現像のときにすごく派手に補正しております。実際、ここまで山々はくっきりとしてないし、ここまで派手な色ではないけれども、おまけってことで。
11月も終わりになると都市部も紅葉してきます。桜ほど短期間で散っちゃうことはないけれども、旬は意外に短いもの。みなさまもぜひ色の変化をお楽しみくださいませ。
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