キヤノン「EOS Kiss」シリーズは、ロングセラーを続ける入門者向けの一眼レフカメラだ。2003年に第1号機を発売して以来、ほぼ毎年のようにモデルチェンジを行い、そのつど進化を遂げてきた。
2014年に関しては、ローエンドモデル「EOS Kiss X70」のみの発売という少々さびしい内容だったが、その分、今春のモデルは力が入っている。4月末に登場した「EOS Kiss X8i」である。2013年に発売された既存モデル「EOS Kiss X7i」と比較しながら、その性能を見ていこう。
まず注目したいのは、新開発のセンサーとエンジンを搭載したこと。撮像素子には、シリーズでは初めて2000万画素を超える有効2420万画素のCMOSセンサーを採用。APS-Cサイズでは最多クラスの画素数となるセンサーだ。
エントリー向けのカメラにこれほどの画素数が必要かどうかは意見が分かれるところ。PCへの負担が大きくなるなど、多画素化によるデメリットはいくつかある。ただ一方で、細部の精細感が高まったことは確かにいえる。
次の写真は、2420万画素センサーのEOS Kiss X8iと、1800万画素センサーのEOS Kiss X7iを同一条件で撮り比べたもの。PCのディスプレイ上で画像を等倍表示にして見比べると、遠景の細かい部分の再現性がワンランクアップしていることが分かる。
画像処理エンジンについては、EOS Kiss X7iの「DIGIC 5」から、EOS Kiss X8iでは「DIGIC 6」にバージョンアップした。選択できる感度は変わらず、ISO100〜25600の範囲を1段ステップで選べる。
次の写真は、EOS Kiss X8iとEOS Kiss X7iで撮影した感度別のJPEGデータだ。高感度ノイズ低減機能は「標準」を選択した。EOS Kiss X8iは多画素化したにもかかわらず、高感度ノイズは汚く感じないように低減されていることが分かる。特に、ISO6400以上の高感度では、EOS Kiss X7iよりもノイズ感は目立たない。
なお、RAWデータでも同様の高感度比較を行ったが、同じように新モデルのほうが高感度ノイズは少なめだった。高感度の画質向上は、処理エンジンの進化だけでなく、センサーからの出力そのものが低ノイズ化しているようだ。
機能と操作の面では、特にAFの改良に注目したい。新搭載したAFセンサーは、オールクロス19点測距に対応。従来のオールクロス9点センサーから測距点は倍以上に増え、測距エリア選択モードは「1点AF/ゾーンAF/19点AF」の3つから選択可能になった。中級機に匹敵するぜいたくな仕様だ。
さらに、ピント合わせの際に肌色を認識する「色検知AF」機能が加わり、人物への合焦性能が向上した。キットレンズを使った試用では、ストレスなく滑らかに作動するAF性能を実感できた。
光学ファインダーには、EOS Kissシリーズでは初めてインテリジェントビューファインダーを採用。これはファインダー内部に組み込まれた透過型液晶を利用し、AFフレームやグリッド、アスペクト線、フリッカー検知といった各種情報を光学像に重ねて表示できる仕掛けだ。設定によって、合焦の瞬間以外はAFフレームを非表示にでき、構図や被写体に気持ちをいっそう集中できる点がありがたく感じる。
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