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» 2015年11月06日 17時00分 UPDATE

交換レンズ百景:レンズ前約7センチまで寄れる新型ワイドレンズの実力――タムロン「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」

タムロンの新しい広角単焦点「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」を使ってみた。滑らかなボケを生み出す明るい開放値と効果3段分の手ブレ補正に加え、クラス最高をうたう近接性能が魅力の1本だ。

[永山昌克,ITmedia]

ハーフマクロレンズに匹敵する近接撮影能力

 フルサイズ対応で焦点距離35ミリのレンズといえば、50ミリと並んで単焦点のベーシックとも呼べる存在だ。眼前の風景を広すぎず狭すぎない適度な画角で捉えることができ、ちょっとしたスナップから、風景、静物、ポートレートまで幅広い被写体に役立つレンズである。標準と呼ばれる50ミリよりも、ほどよい広角である35ミリを使いやすく感じる人も多いだろう。

 そんな基本レンズである35ミリ単焦点のジャンルに、独自の魅力を備えた新製品が加わった。タムロン「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」である。前回取り上げた「SP 45mm F/1.8 Di VC USD」と同じく、新しい「SP」シリーズの第1弾となるモデルだ。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD タムロン「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」。装着したボディは「EOS 6D」。キヤノン用以外にニコン用とソニー用が用意されている

 いちばんの見どころは、最短の撮影距離が20センチと非常に短いこと。最大の撮影倍率は0.4倍となり、マクロレンズ以外の35ミリ単焦点ではクラス最高をうたっている。一般的に撮影倍率0.5倍のレンズをハーフマクロと呼ぶが、それに迫る近接能力だ。

 ちなみにライバルともいえるキヤノン「EF35mm F2 IS USM」は、最短距離が24センチで、最大倍率が0.24倍。ニコン「AF-S NIKKOR 35mm f/1.8G ED」は、最短距離が25センチで、最大倍率が0.23倍。どちらも近接撮影に比較的強いといわれていたが、後発のタムロンに差をつけられたかたちだ。

 どのくらい近寄れるかは実写を見て確認しよう。下の写真は、直径約5センチのダリアの花を最短撮影距離付近で捉えたもの。単に寄れるだけでなく、写りもいい。各種の収差は目立たないように低減され、にじみのないシャープな描写が得られた。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD マニュアル(F11、1/320秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

 次も同じく最短距離近くで撮影したもの。最短撮影距離でのワーキングディスタンスは実測で約7センチ。かなり近いので、カメラやレンズの影の映り込みには注意して撮影したい。この写真では斜め上からストロボ光を当て、写真に陰影と立体感を与えている。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD マニュアル(F11、1/125秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

 さらにAPS-Cフォーマットのカメラに装着した場合には、もっと大きく写すことが可能になる。次の写真は、マウントアダプターを介してキヤノン「EOS M3」で撮影したもの。35ミリ判に換算した焦点距離は56ミリ相当で、撮影倍率は0.64倍相当。ハーフマクロを超える倍率が楽しめる。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD マニュアル(F11、1/200秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS M3

 ここまでの3カットは絞り込んで撮影したが、開放値の描写も見てみよう。下の写真は、絞りF1.8で撮影したもの。被写界深度が浅くなり、背景には滑らかなボケが生じている。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD マニュアル(F1.8、1/160秒)、ISO100、ホワイトバランス:日陰、カメラ:EOS 6D

 次の2枚も開放値で撮影。細かいことをいえば、周辺の玉ボケがややレモン型であることや、玉ボケの中に同心円状のスジが見られることを指摘できるが、不自然なボケではない。SP 45mm F/1.8 Di VC USDでやや見られた軸上色収差も本レンズでは気にならない。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD 絞り優先オート(F1.8、1/4000秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

 さらに逆光に強いことも魅力の1つである。強い光が入射するシーンでもフレアやゴーストは少なめで、十分なコントラストを維持できる反射防止性能を確認できた。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD 絞り優先オート(F1.8、1/1000秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

フローティング機構によって各種収差を補正

 レンズの外観デザインは、同時発売されたSP 45mm F/1.8 Di VC USDとほぼ共通だ。外装はしっかりとした剛性を感じる金属製。表面は黒の半光沢仕上げとなり、鏡胴側面にはSPの文字を刻んだエンブレムを、根元部分にはルミナスゴールドのリングをそれぞれ配置して、高品位な雰囲気を高めている。

 マウント部にゴムスカートを配置するなどして、水が浸入しにくい簡易防滴構造を実現したことや、汚れをふき取りやすい防汚コートを最前面レンズに施したこともSP 45mm F/1.8 Di VC USDと同じだ。高級レンズとしてのこだわりといっていい。

 レンズのサイズは、最大径が80.4ミリで全長が80.8ミリ。重量は480グラム(いずれもキヤノン用の場合)。フィルター径は67ミリ。SP 45mm F/1.8 Di VC USDに比べると全長は短く、重量も少し軽くなっている。ただフルサイズの35ミリレンズとしてはやや大きくて重めだ。手ブレ補正に加えてフローティングシステムを採用したため、ある程度の大きさは仕方ないのかもしれない。フローティングシステムとは、フォーカシング時の距離変化に応じて特定のレンズ群を最適な位置に移動させ、全ての撮影距離で高い光学性能を維持する仕組みである。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD 新しいTAMRONのロゴマークを鏡胴の中央に記し、その下に距離目盛と距離指標を配置。側面にはAF-MF切替スイッチおよびVC(手ブレ補正)のスイッチを備える

 フォーカスリングはゴムローレットを巻き付けた幅広のタイプとなる。フォーカスリングの回転角は約190度。その多くが1メートル以下の近距離に割り当てられていて、厳密なマニュアルフォーカスの操作も確実に行える。AFについては、独自の超音波モーター「USD」によってスムーズに作動する。AFスピードは超高速とはいえないが、特にストレスを感じることはなかった。

 レンズ構成は、ガラスモールド非球面レンズや異常低分散レンズ、XLDレンズを含む9群10枚。絞りは、9枚羽根による円形絞りとなる。下の写真では、9枚羽根による18本のきれいな光芒を確認できる。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD マニュアル(F11、1/500秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D
SP 35mm F/1.8 Di VC USD マニュアル(F8、1/100秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

 トータルとしては、各種の機能と性能がバランスよくまとまっていると感じられた。開放値がF1.4ではなくF1.8であるため、スペック上のインパクトは少々弱いが、実際の使用感としては、明るさにもの足りなさを覚えることはなかった。何よりも、一歩近寄って撮れる近接性能はほかの35ミリレンズに勝る価値だ。マクロ撮影も楽しめる広角単焦点レンズとして幅広くおすすめできる。

SP 35mm F/1.8 Di VC USD マニュアル(F2.5、1/160秒)、ISO3200、ホワイトバランス:オート、カメラ:EOS 6D
SP 35mm F/1.8 Di VC USD 絞り優先オート(F11、1/60秒)、ISO100、ホワイトバランス:太陽光、カメラ:EOS 6D

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