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» 2015年11月25日 06時00分 UPDATE

山形豪・自然写真撮影紀:アフリカでニコン「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」を使う

先頃発売となったニコンの超望遠ズームレンズ「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」を南部アフリカ、ボツワナのサファリで使用した実感をリポート。

[山形豪,ITmedia]

 最大焦点距離500ミリ以上の超望遠ズームレンズは、タムロンやシグマから150-600ミリクラスのものが発売されており、価格、重量、サイズと全てが弩級な超望遠単焦点レンズよりも安価で、かつ小型/軽量なパッケージで高倍率の撮影ができるとあって、鳥類や乗り物などを撮る人々の間では人気を博してきた。

 なぜニコンも同様のレンズを出さないのかずっと疑問に思っていたが、9月に満を持して、「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」(以下、AF-S 200-500mm f/5.6E)が発売となった。そしてこのほど南部アフリカ、ボツワナのサファリでこのレンズを使う機会を得たので、鳥類や哺乳類の撮影を世界自然遺産オカバンゴ・デルタで試用してみた。

 この新型レンズとセットで使ったボディはニコン「D810」。比較的小型でありながら高画質な点と、クロップモードを使えば連写速度が上がり、高速で動く被写体でもそれなりに幅広く対応できることから、画質面と機動力の両面を考慮しての選択だ。

山形豪 オカバンゴ・デルタでモコロから野鳥を撮影中の筆者

 初めてAF-S 200-500mm f/5.6Eを手に取った時は、まずその大きさに驚いた。「AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR」(以下、AF-S 80-400mm f4.5-5.6)よりもひとまわり太く、フィルター径も95ミリある。そして重量も、回転式三脚座を含めて2300グラム、三脚座なして2090グラムと、なかなかの存在感だ。しかし、ボディに取り付けてみるとバランスは良好で、取り回しは容易にできたし、作りもがっちりとしていて好感を持った。

 前部繰り出し式の超望遠ズームレンズは、テレ側で使用する際の鏡筒のガタつきが気になるものだが、AF-S 200-500mm f/5.6Eにそれはなく、ズームの動きもスムーズだった。ただし、繰り出し量は相当なもので、500ミリ側ではかなりの長さになる。当然前がどんどん重くなるため、扱いにはそれなりの慣れが必要だった。

 合焦速度に関しては、「AF-S NIKKOR 500mm f/4E FL ED VR」(以下AF-S 500mm f4)やAF-S 80-400mm f4.5-5.6などの、AFを起動させた瞬間にスパッと決まる感じはなく、かなりゆったりとしたペースで動く印象だった。そのため、至近距離から遠距離のものへ(あるいはその逆へ)ピントを合わせるには多少時間がかかり、当初いささか戸惑いを覚えたが、それを見越した上での撮影ができるようになると、さほどストレスは感じなくなった。

山形豪 着水間際のアフリカヘラサギ。F8、1/1000秒、ISO250、焦点距離:500mm、カメラ:ニコンD810、レンズ:AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

 今回のサファリでは、通常の車からの撮影以外にも、モコロと呼ばれるボツワナの伝統的なカヌーからの野鳥の撮影を行った。陸からは近づきにくい水鳥を、水面スレスレから撮れるのがモコロの利点なのだが、身動きがとりづらく不安定な状態で機材を扱わねばならないため、大型の超望遠レンズは使用が難しい。そんな状況で200-500ミリは極めて効果的だった。とにかく取り回しが楽で、AF-S 500mm f4を手持ちで使うよりもはるかに高い確率で飛ぶ鳥をファインダーに捉えることができた。

 また、最短撮影距離が2.2メートルと、500ミリの超望遠レンズとしては極めて短いため、遠くの被写体のみならず、至近距離にいる小さな被写体の撮影にも有効だ。例えば、作例のヤモリの仲間は、全長が5センチ程度の小型な爬虫類だが、このような被写体すらかなりの大きさで撮ることができた(D810でDXクロップモードを使用)。VRの効きもよく、低速のシャッタースピードも思い切って使うことができる点もありがたい。

山形豪 小さなヤモリの仲間。至近距離からの撮影で、シャッタースピードも低速だったがしっかり写っている。F16、1/50秒、ISO250、焦点距離:500mm、DXクロップモード、カメラ:ニコンD810、レンズ:AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

 このレンズに関して一番驚かされたのはその画質だ。AF-S 80-400mm f4.5-5.6のようにスーパーEDレンズやナノクリスタルコーティングは使われていないし、値段も値段なので当初あまり期待はしていなかったが、私の予想は見事に裏切られ、全焦点距離で非常にシャープな画像をもたらしてくれた。ボケ味も、ズームレンズとしては決して悪くないし、開放F値が全ズーム域で5.6なため、ズーミングによるファインダー内の明るさや露出値の変動がないのは撮影時のストレスが少ないことを意味している。

山形豪 飛翔するサンショクウミワシ。F8、1/1600秒、ISO400、焦点距離:500mm、DXクロップモード、カメラ:ニコンD810、レンズ:AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

 一方で、難点を挙げるとすれば、以下のようなものだ。まず、AF-S 80-400mm f4.5-5.6 と同様、相変わらず残念な回転式三脚座。横位置から縦位置に変える際、動きに引っ掛かりが多くて実に使いづらい。結局今回のフィールドでは、脚座を外した状態で使っていた。

 もう1つはズームリングの回転角の大きさ。特に手持ちで使用していると、最低2回に分けて回さねばワイド端からテレ端までズームできないため、とっさの時に、画角変更にいささか時間がかかり、まどろっこしい思いを何度かした。

 3つ目がフォーカスリング。動きが軽すぎて、マニュアルでのピント補正がいささか難しいと感じた。個人的にはもう少し抵抗があっても良い気がするのだが、これは個人的な好みの問題かもしれない。

 そして一番残念に思うのがフードだ。これが何とも外れやすく、テープで止めておかないとすぐにどこかへ行ってしまう。同時期に発売になっている「AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR」には、押しボタンによるロック機構が備わったとても気の利いたフードが付いているのに、なぜAF-S 200-500mm f/5.6Eに同じデザインを採用してくれなかったのかと思う次第だ。当然コストダウンを図るためなのだろうが、それにしてももうちょっとマシなものを作ってほしかった。

山形豪 ブチハイエナとそれを警戒するヌーの群れ。背景もきれいにボケている。F7.1、1/400秒、ISO320、焦点距離:300mm、カメラ:ニコンD810、レンズ:AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

 とまあ、一通り文句は述べてみたものの、このコンパクトなパッケージで500ミリまでの焦点距離が、それもかなりの高画質と共に手に入るというのは特筆に値する。しかもこの性能で価格が15万円程度というのは実に素晴らしい。AFが多少遅い感はあるが、慣れればどうということはないし、価格を考えればそこはご愛嬌といったところだろう。

 三脚座なしでのD810との合計重量が3キロ程度なので、長時間の手持ち撮影にはそれなりの腕力が必要となるが、機材の総重量を抑えつつ、野鳥撮影に使える超望遠レンズをフィールドに持って行きたい私のような人間にとって、非常に頼もしいレンズであることは間違いない。作りも頑丈なので、フィールドで使うレンズとしてはうってつけであるというのが私の感想だ。ただし、長期に渡って使用したわけではないので、耐久性や防じん/防滴性能などについては未知数だ。

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