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比類なき最高峰のコンデジ ソニー「RX1R II」はどう進化したか(2/3 ページ)

» 2016年01月04日 06時30分 公開
[荻窪圭ITmedia]

ローパスフィルター選択機能の実力は

 新搭載の4240万画素センサーは、像面位相差AFセンサーを利用した高速AFと光学式可変ローパスフィルターを使ったローパスフィルター切り替え機能が大きな進化点。特に光学式可変ローパスフィルターは世界初である。

 デフォルトはローパスフィルターオフ。まあ、オフでいいと思う。ローパスフィルターは細かいパターンで出やすいモアレを抑制するが、その分ディテールの解像度が落ちるという欠点を持ってる。で、最近、モアレより解像感というわけでローパスフィルター非搭載だったりオフにできたりするカメラが増えているわけだ。

 モアレは画素ピッチが狭くなると出にくくなるので、最近のコンデジはまず搭載していない。フルサイズ機でも4000万画素を越えるとモアレは出づらいので、RX1R IIを使うときも基本はオフでOKだろう。

RX1R II ローパスフィルター効果。オフ/スタンダード/ハイの3段階から選べる。デフォルトはオフ

 新しいのはローパスフィルターブラケット機能。これをオンにするとローパスフィルターをオフ、スタンダード、ハイの3種類の設定でブラケット撮影してくれる。

 どのくらい違うのかこれで撮り比べてみた。

RX1R II ドライブモードのブラケットの中にローパスフィルターブラケットが用意された。ローパスフィルター効果を変えながら3枚撮ってくれる
RX1R II 下の段がローパスフィルターオフ。よく見るとディテールの解像感が違う。オフが一番はっきりしているのは確かだが、他の2枚は微妙な差

 元画像もどうぞ。1枚につき17MBほどあるけれども。

RX1R II ローパスフィルター ハイ
RX1R II ローパスフィルター スタンダード
RX1R II ローパスフィルター オフ

 いずれにせよ、さすが4000万画素の解像感である。

 レンズは35mmの単焦点でF2からF22。シャッタースピードは最高で1/4000秒(ただし、F5.6以上。F2では1/2000秒)となる。

 描写は開放値だとやや甘めだが、F2.8以上に絞るとぐっとよくなる。

RX1R II 同じ構図でF2/2.8/4.0/5.6と撮り比べたもの。F2は少し描写が甘いが1段絞るとよくなる

 光学式手ブレ補正は未搭載なので、手ブレには注意すること。普段なら手ブレしないと思うシャッタースピードでも、画素数が多いので、その分わずかなブレも記録されてしまう。多少微細なブレがあっても写真としては問題ないけど、4000万画素でローパスフィルターレスだ、と意気込んで等倍表示して「あ、ブレてた」となるのが悲しい人は要注意ということで、普段より1段ほど速めのシャッタースピードにするのが賢明かと思う。高感度には強いので多少上げても問題はない。

 ISO感度はISO100から25600だが拡張ISO感度としてISO102400までいける。ISOオートは感度を早めに上げるか遅めにするかで5段階で調整できる。絞り優先の場合、1つ早めにすると1段、更に早くすると2段分シャッタースピードが上がるので、手ブレが不安な人やラフに撮りたい人は早めにセットしておくことを勧めたい。

RX1R II ISO AUTO低速限界をセットするとISOオート時の感度の上がり方を調整できる

 高感度時の絵はよい。感度を上げるとさすがにざらつきは増えるけれども、階調は保たれているし不自然さもない。絞り開放で撮るのなら夜の街でも手持ちでまったく問題ない。

RX1R II 夜の川べりでポートレート。絞り優先AE(F2、1/100秒)、ISO3200、+0.7EV

 夜のスナップ撮影が楽しくなるカメラだ。

 AFはかなり快適で正確。RX1に比べるとはるかによくなった。

バッテリーの持ちはいまひとつ

 操作系は従来のRX1を踏襲。上面に撮影モードダイヤルと露出補正ダイヤルがあり、鏡胴部に絞りリング・フォーカスリング・マクロ切り替えがあり、背面に電子ダイヤル、コントロールホイール、各種ボタンがある。ボディはコンパクトだが窮屈さは感じない。

RX1R II 前面から。前面にフォーカスモードダイヤルがある
RX1R II 上面から。アクセサリーシューの右に撮影モードダイヤル・電源とシャッターボタン(ケーブルレリーズ対応)、露出補正ダイヤル、カスタムボタン1がある。絞りは絞りリングでその先にマクロ切り替えとフォーカスダイヤルがある
RX1R II 背面に電子ダイヤル・再生ボタン・コントロールホイールなどが並ぶ

 ソニーのカメラ全体にいえることだが、測距点の移動をもうちょっと即座にできたらいいなとは思うけれども、操作系で不満を感じたのはそのくらいか。

 キーのカスタマイズを自分好みで行えばストレスなく使えるはずだ。

RX1R II キーのカスタマイズは豊富。十字キーの左右や下にも割り当てられる

 動画はフルHD(1980×1080ピクセル)の60pでXAVC SやAVCHDに対応。4Kには未対応だ。光学式手ブレ補正はないが、動画時は電子式手ブレ補正をオンにできる。

 気になったのはバッテリーの持ち。

 フルサイズ機の割にバッテリーは小型で、本格的に撮ると1日持たない感じだ。公称(CIPA準拠)で背面モニター使用時約220枚、ファインダー使用時で約200枚と決して多くはない。USB充電が可能なので、予備のバッテリーかモバイルバッテリーは必須だろう。ちょっとした休憩時間にモバイルバッテリーをつないで充電するか、ケーブルが気にならないなら給電しながら撮影もできる。

 逆にいえば、USB充電可能な仕様はこういうときにありがたい。いざとなればコンビニでスマホ用のモバイルバッテリーを買えばその場しのぎになるし。

RX1R II バッテリーの持ちはよいとはいえないので、モバイルバッテリーは欠かせないかも。ちょっとした合間にこうして充電できるほか、給電しながらの撮影も可能だ

 そこを除けば実に撮ってて気持ちのよいカメラだ。EVFや背面モニターも見やすいし、撮れる絵もいいし、AFも速くなった。特にEVFを内蔵してくれたのがうれしい。

 コンパクトデジカメの最高峰の座は健在で、スナップ用カメラとして欲しくなる。気持ちよく撮れてこのクオリティなら問題ない。

 ただ価格もすごい。

 初代機のRX1やRX1Rは発売時価格が20万円台だったのに対し、RX1R IIは40万円を越える(残念ながら発売が延期になってしまったが)。道楽カメラの価格である。悩ましいところである。

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