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» 2016年02月20日 11時35分 UPDATE

山形豪・自然写真撮影紀:「D500」のAF性能を堪能する

APS-Cサイズに相当するDXフォーマットの「D500」には、「D5」と同じAFセンサーが搭載されている。するとどうなるかというと、ファインダー内の4分の3ほどがAFセンサーでカバーされることになる。その性能をフィールドで試してみた。

[山形豪,ITmedia]

 前回に引き続き、ニコンの「D500」をアフリカのフィールドで使った際のインプレッションを述べていこう。今回は特に動体撮影時のオートフォーカス(AF)関連の性能に言及してみたいと思う(作例はすべてβ機による撮影)。

D500 作例

 最新のハイエンドモデルであるD500は、当然AFの性能も向上しているわけだが、実戦で使ってみるとその進化が、過去の新機種登場のときに比べても際立っているという印象を受けた。

Nikon D500 ニコン「D500」

 まずファインダーをのぞいた瞬間に驚かされるのが、大幅に増えたAFエリアの数だ。総数は153点と非常に多く、そのうち99点がクロスセンサー、55点が選択可能となっている。しかも、今までなら数が増えてもそれらが画面の中心部に集中していたので、あまり大きな意味を感じなかったが、D500では画面の左右目一杯まで広がっている。AFエリアがないのはファインダー内の上下4分の1程度だけだ。そして、AFセンサーモジュールは、なんとフラッグシップモデルの「D5」と同様のものを搭載している。D500はDXフォーマットであるがゆえに、フルサイズのD5よりも画面内のAFエリアのカバー範囲が広い。見方によってはD5よりもAF性能が上であるとも言える。

D500 ファインダー D500のファインダーのイメージ。画面内が幅広くカバーされているのが分かる(ニコン D500製品情報ページより)

 残念ながらまだ画面全体をカバーするまでには至っていないものの、1.3倍クロップを使えば撮影範囲内のほぼ100%がAFエリアでカバーされることになり、どのような構図であってもAFを利用しながら撮れるようになる。また、クロスセンサーが中央部のみならず、左右両端にも配置されているので、以前ならファインダースクリーンの真ん中でしか検知できなかった低コントラストのトリッキーな被写体が、周辺部でも検知できるようになった。AFの多点測距はF5などのフイルムカメラの時代に登場して以来随分年数が経っているが、ついに、というかやっとここまで来たかという感じだ。

 もちろん、単にAFエリアの数が増えれば撮影時の成功率が上がるかというと、そうではない。各測距点を制御するためのAFエリアモードも高精度化/高速化することが不可欠だ。D500では、コンティニュアスAF(AF-C)モード時のメニューも、状況に応じてシングルポイント、ダイナミックAF(25点、72点、153点の3種類)、3Dトラッキング、グループエリアAF、オートエリアAFから選べるようになっている。多様な選択肢が用意されることで、幅広いシーンや被写体、撮影者の好みやスタイルに対応することが可能となった。となると、撮影が成功するか否かはカメラを扱う者の問題となってくる。つまり、自分の撮りたい写真を撮るのにもっとも適した組み合わせはどれなのかを、いかに見極められるかが鍵だ。

 私の場合、試行錯誤の末、アフリカのサバンナで野生動物や鳥類を撮るのに一番使いやすいのはダイナミック25点AF(25個のAFポイントを1つのグループとして扱うモード)であるという結論に達した。その理由は以下のようなものだ。

 まず動物写真では、相手の顔、または目にピントを合わせるのが鉄則であって、これは動いている相手でも変わらないが、接近の難しい被写体が多いため、超望遠レンズを手持ちで使う頻度が極めて高い。となるとシングルポイントで動く相手の目にピントを合わせ続けるなど到底不可能だ。その点、ダイナミック25点ならば、1グループが大きすぎず、小さすぎず、目にロックオンしたあと、相手の動きや、こちらの手ブレによって画面内の顔の位置が変わっても25点中のどれかがターゲットを捕捉し続けてくれるのだ。グループの位置自体をボディー背面のセレクターを使って移動させながら撮影することもできるので、相手の動きによって構図が変化しても合焦位置の正確なポジショニングとスピーディな撮影とが両立できる。

 ではダイナミック72点や153点の何がダメなのかというと、サバンナという環境では被写体の手前や背景に植物や岩などさまざまなものが入り込んでくる。しかもほとんどの動物は周囲の環境に溶け込むための色や模様をしている。さすがにD500といえどもそこまで認識し、区別してくれるわけではないので、よほど被写体が画面全体を埋め尽くしていない限り、ピントが背景などに持って行かれる可能性が高いのだ。

D500 作例 土ぼこりを立てる子ゾウ。F7.1、1/1600秒、ISO320、AF-C、ダイナミック25点AF、レンズ:AF-S VR 500mm f4E FL ED VR、焦点距離:750mm相当

 もちろん、青い空をバックに飛んでいる鳥ならば、153点やオートエリアAFでも撮れるかもしれない。しかしそれも注意しないと、相手との距離次第では、頭ではなく翼の先端などにピントが合ってしまう可能性は否定できない。さらに、頭が大きく、複雑な形をしているゾウやライオンなどを至近距離から撮ると、同じ顔面の中でも目とそれ以外の部分とではピント位置が全然ちがう。AFエリアのカバー範囲が広すぎると、目に合わせたいのに鼻面に持って行かれたりする。AFエリアのカバー範囲はあくまで目とその周辺だけであってほしいのだ。

D500 作例 飛び立ったコサギ。AFエリアをいかに被写体頭部に持ってくるかが鍵だ。F7.1、1/6400秒、ISO500、-−0.3EV、AF-C、ダイナミック25点AF、レンズ:AF-S VR 200-500mm f/5.6E、焦点距離:600mm相当

 AFエリアモードの多様化と同時に、AF-Cモード時のターゲット追尾性能も確実に向上している。動体追尾モードがもっとも苦手とするのが、ランダムな動きをする被写体の動作を”予測”することだが、D500 では、カスタムファンクションのAFロックオンメニューから、被写体の動きの特性に合わせて、ランダムかスムーズかを選択できるようになった。これにより疾走しながらスピードや方向をいきなり変える動物を撮る際の成功率が格段に向上した。

 作例のインパラは、まさにそんな一例で、急激な方向転換を繰り返しながらこちらに向かって走ってきた直後にいきなり左方向に向きを変えた。以前ならば方向転換をしたところでピントが合わなくなっておしまいだったところだ。ジャンプをしながらこちらに向かってきていたということは、スピードはまったく一定ではなかったことを意味しているが、それでも非常に高い確率でピントが合っていた。

D500 作例 ジャンプしながらこちらに向かってくるインパラ。F4、1/1250秒、ISO250、AF-C、ダイナミック25点AF、レンズ:AF-S VR 500mm f4E FL ED VR、焦点距離:750mm相当
D500 作例 急に向きを変えたインパラ。F4、1/1250秒、ISO250、AF-C ダイナミック25点AF、AF-S VR 500mm f4E FL ED VR、焦点距離:750mm相当

 それにしても、カメラ側のAF性能自体がここまで向上してくると、それまで撮れなかったシーンの撮影ができるようになると同時に、撮影者の技量がよりシビアに試されることになるというのが正直な感想だ。まず明確な撮影意図を持ち、それをものにするために的確なAFモードの選択を行ったのち、被写体をファインダーに捉え続けながら、構図決定とAFロックオンを同時に成功させねばならない。動物や鳥が相手ならば、確実に頭部にロックオンしないと、変なところにピントが合い続けてしまう。カメラの性能が自らの撮影意図に追いついていないから失敗したのだといった類の言い訳は通用しない。道具が高性能化すればするほど、そのポテンシャルを引き出し、使いこなすのは難しくなるので、心して”修行”に励まねば宝の持ち腐れになってしまうだろう。

 次回は各レンズとの相性について言及してみようと思う。

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