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初級者のためのRAW現像入門(前編)――RAW撮影のススメ(1/2 ページ)

趣味としてデジカメ撮影を楽しむなら、JPEGではなくRAWで撮るのがおすすめ。好みや被写体に応じてフィルムの銘柄を選ぶ感覚で、デジタル画像の微妙な発色や階調、細部表現を自由にコントロールできる。

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JPEGデータとRAWデータを比較する

 デジタル一眼やコンパクトデジカメの上位モデルでは、静止画のファイル形式として、通常のJPEG形式のほかにRAW形式を選べるようになっている。RAWとは「生」の意味。CCDやCMOSなどの撮像センサーから出力されたデータをカメラ内部ではあまり加工せず、生に近い状態で保存したファイルを「RAWデータ」と呼ぶ。

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コンパクトデジカメでも最近ではRAW記録を行える製品が増えている(写真のキヤノン「PowerShot S95」もRAW記録を行える)

 RAWデータは、カメラ内ではJPEGと同じように再生できるが、パソコンに取り込んだ場合、そのままでは表示できない。一般的なソフトで画像を表示・加工・印刷するには、RAWをJPEGやTIFFなどの標準的なファイル形式に変換する必要がある。その変換作業を「RAW現像」といい、それを行うソフトが「RAW現像ソフト」である。

 といっても、単なるファイル形式の変換がRAW現像の目的ではない。RAWデータは、カメラ内で画像処理をほとんどしておらず、ホワイトバランスやカラーモード、シャープネスといった画質に関する設定が確定していない。そこで、これらの設定を自分の手で決めることが、RAW現像のいちばんの目的だ。

 JPEGの場合でも、レタッチソフトを使って色や明るさなどを調整することはできる。だが、カメラ内でいったん色などが確定され、さらに圧縮処理が加わったJPEGの画像は、後から補正をすればするほど画質が劣化してしまう。その点、RAWなら、現像ソフト上で繰り返し補正しても、元のクオリティを保つことができるのだ。

 JPEGとRAWに、どのくらいの違いがあるかは実際の作例を見ると分かりやすいだろう。ここでは、カメラの設定を「JPEGとRAWの同時記録モード」にセットして、同じシーンをJPEGとRAWの両方で撮影した。下の写真1は、そのオリジナルJPEGデータだ。次の写真2は、そのJPEGデータに補正を加えたもの。写真3は、RAWデータを補正し、JPEGとして出力したものだ。

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写真1。JPEGで撮影した元画像。見た目よりもかなり赤っぽく写っている
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写真2。JPEGデータを補正した画像。十分に補正できず、光源の周辺部など部分的にカラーバランスが崩れている
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写真3。RAWデータを補正・現像した画像。ほぼ見た目に近い色合いに仕上げることができた

 ここでの補正の狙いは、赤っぽく写った元データのホワイトバランスを修正し、見た目に近い色合いにすること。JPEGデータでも、ある程度の補正はできたが、RAWデータからの補正のほうがより美しい仕上がりとなっている。

RAWモードで撮影するメリットって何?

 白トビや黒ツブレに対してもRAWデータのほうが有利だ。前述したようにRAWデータは、撮像センサーから出力されたデータをそのままに近い状態で、12〜16ビットで記録している。一方でJPEGは、カメラ内部の処理エンジンによって8ビットに圧縮記録している。圧縮の際に色や階調などの情報が間引かれてしまうのだ。

 以下の写真4〜6は、同一シーンをJPEGとRAWの両方で撮影し、ハイライト部の再現性を比較したもの。

photophotophoto 写真4。JPEGで撮影した元画像。露出オーバーになり、空が白とびしている(写真=左)、写真5。JPEGデータを補正した画像。どんなに暗く補正しても、白とびした部分は回復しない(写真=中)、写真6。RAWデータを補正・現像した画像。暗く補正すると、JPEGでは見えなかった富士山が現れた。白とびしたように見えていた部分も、RAWでは画像情報がしっかりと残っていたのだ(写真=右)

 続いて、黒つぶれも検証してみよう。以下の写真7〜9は、同一シーンをJPEGとRAWの両方で撮影し、シャドー部の再現性を比較したものだ。

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写真7。JPEGで撮影した元画像。露出アンダーで、建物が黒つぶれしている
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写真8。JPEGデータを補正した画像。明るく補正すると、建物のディテールが表れた。ただし、かなりノイジーで、発色もよくない
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写真9。RAWデータを補正・現像した画像。写真8のJPEGからの補正画像に比べると、細部描写と発色で勝っている

 誰だって、撮影の際に露出やホワイトバランスの設定に失敗し、暗く写ったり、色かぶりが生じてしまうことはときどきあるだろう。そんな時、JPEGではなくRAWで記録しておけば、後から最適な明るさと色に調整することができる。また、撮影時には細かい設定を気にせず、意識を被写体に集中できることもRAW撮影のメリットといえる。

 逆にRAWのデメリットは、JPEGに比べてファイル容量が大きいため、1枚のカードに記録できる枚数が減ったり、パソコンのHDD容量がすぐにいっぱいになることだ。また、連写の撮影可能枚数も低下する。こうしたRAWの長所と短所を知った上で、RAWの撮影と現像を楽しみたい。気楽なスナップ用にはJPEGを、大切な作品用にはRAWを、といったように使い分けるのもいいだろう。

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