パンケーキレンズがとらえた半径1メートル圏内の眺め――パナソニック「LUMIX G 20mm/F1.7 II ASPH.」:交換レンズ百景
薄型軽量のパンケーキレンズは、カメラに付けたままにして常に持ち歩くのがお勧め。明るさと描写にこだわったパナソニック製パンケーキを使って、いつもの見慣れた風景から新鮮な1コマを探してみよう。
身近なものをスナップするのに最適な画角
パンケーキレンズとは、パンケーキのように薄いことから名付けられた薄型軽量レンズ。その歴史は古く、一眼レフ用では1960〜70年代にかけてミノルタやニコンなどの数社が全長20ミリ以下、質量150グラム以下の薄型軽量レンズを発売していた。当時は、一部の愛好家に向けた趣味性の高いレンズという位置付けであり、私のかすかな記憶では、パンケーキなんていうしゃれた呼び方もまだなかった。単に鏡胴の短いレンズである。
デジタル一眼レフの時代になってからは、ペンタックスやオリンパスが小さなボディを際立たせるレンズとしてパンケーキレンズを発売した。さらにミラーレスカメラの登場以降は、レンズキットにパンケーキレンズを同梱するメーカーも増えている。もはやマニアックな印象は薄れ、ふだん使いのレンズとして市民権を得たといっていい。
パナソニック「LUMIX G 20mm/F1.7 II ASPH.」は、そんな一般ユーザー向けパンケーキレンズのひとつ。同社のミラーレスカメラ「LUMIX DMC-GX7」のキットレンズとしても発売されている薄さ25.5ミリの単焦点レンズである。
レンズマウントはマイクロフォーサーズ規格に準拠し、35ミリ換算の焦点距離は40ミリ相当に対応する。一般的な35ミリの広角レンズよりも狭く、50ミリの標準レンズよりは広い画角はやや中途半端にも感じるが、いったん慣れてしまうとスナップ用途に結構使いやすい。そういえば、1960〜70年代のパンケーキレンズのほとんどは40〜45ミリの焦点距離を備えていたので、往年のパンケーキ愛好家にとっても、すんなり受け入れられる画角といえるだろう。
なお製品名に「II」とあるように、このレンズは2009年に発売された「LUMIX G 20mm/F1.7 ASPH.」の後継モデルである。光学系はそのままで、外装を変更することで質量を100グラムから87グラムへといっそう軽量化している。
携帯性と描写力、明るさの3拍子がそろったレンズ
実際の使用では、レンズが付いていることを忘れてしまうほど薄くて軽く、カメラの取り回しが非常によくなる点が気に入った。オリンパスのボディーキャップレンズ「BCL-1580」には負けるものの、それに近い取り回し感覚だ。40ミリ相当という画角の程よさと相まって、目の前にある身近なものを自然な雰囲気のまま切り取れる。
AFについては、高速を誇るパナソニック製マイクロフォーサーズレンズの中ではあまり速いほうとはいえず、合焦までほんの少し待たされる印象が残る。また、うるさく感じるほどではないが、AF作動中にはククーという小さな駆動音が鳴る。
レンズ鏡胴部には、幅約1センチのフォーカスリングを装備する。マニュアルフォーカスの回転角はかなり大きめ。最短撮影距離の20センチにピントを合わせると、前玉部分は約3ミリほど突き出る。フォーカシングによる前玉の回転はない。
写りは、絞り開放値からシャープネスとコントラストが高く、被写体のディテールまでをくっきりと再現できる。周辺減光はやや見られるが、F4くらいまで絞ると解消。歪曲や色収差も気にならないレベルに補正されている。この写りのよさは従来モデルから受け継がれたものだ。
パンケーキレンズといえば、薄さと軽さを優先するあまり、描写性能が犠牲になっている製品も中にはある。だが、この「LUMIX G 20mm/F1.7 II ASPH.」は、パンケーキの中では特に明るい開放F1.7を実現しつつも、写りの面で妥協していないのがお見事だ。
AF性能には課題はあるものの、そこまで求めるのはちょっと酷かもしれない。なにしろ、携帯性と描写力、明るさという3拍子がそろったレンズなのだから。カリッと焼き上がったような精細感と、とろける蜜のような甘いボケ味を日常感覚で賞味したい。パンケーキだけに。
(モデル:石川彩夏 オスカープロモーション)
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