第174回 桜のある街の写真と主従の関係:今日から始めるデジカメ撮影術(3/3 ページ)
春と言えば桜の写真なのである。「桜の花」にフォーカスして撮ってもいいけれど、1年のうち今しか撮れない「桜のある風景」を撮るのもまた良いもの。どうしても桜を主役にしてしまいがち、あえて従とする撮り方もアリなのだ。
夜の桜を楽しもう
最後は夜桜。それもライトアップされた観光夜桜じゃなくて、単なる夜の桜。これがまたいいのだ。
まずは昼の桜。曇天と菜の花畑と桜(タカトオコヒガンザクラという種なのでソメイヨシノより少し色が濃い)ととガスタンクという絵面。
ここ、菜の花と桜を同時に撮れるので毎年訪れているのだけど、今回はたまたま同じ場所で夜の写真も撮っていたのだった。
ちなみに何のライトアップもされてない普通の夜の公園。照明は園内の灯りと街の灯りだけなのでとても暗く、三脚を使うかISO感度をめいっぱいあげないと撮れないのだが、意図的なライトアップとはまた違った自然な夜を撮れていい。
夜桜で悩ましいのがホワイトバランス。オートで撮るときれいに色を合わせてくれるのだけれど、ちょっと撮りたいイメージとは違っていることもある。
でも、実際、街灯ってそんなにきれいな色じゃなくて、もっとオレンジ色っぽかったりするじゃないですか。
そういう人工照明っぽさを残したいときは、ホワイトバランスを晴天に固定してやる。カメラは太陽光の下だと仮定して撮るので、実際の照明との色の差が大きく出て、時にはそれが夜のリアルさを強調してくれる。
さてまた目黒川沿い桜散歩に戻る。川に沿って桜を愛でながら歩いていると、やがて日は暮れ、夜桜の時間になる。目黒川沿いは桜祭りの提灯こそ出ているものの、特に桜がライトアップされているわけではなく、そこがなかなかよい。橋という橋で、多くの人が身を乗り出して夜桜を楽しんでいる。
こんな案配なので三脚をしっかり立てて撮るスペースもない。
そんなとき、小型のポケット三脚があると重宝する。わたしが愛用しているのはマンフロット製のもので、折りたたむとフラットになるので持ち運びが楽ちん。これをカメラに装着し、橋の欄干にのっけてやるのだ。
それで橋の上から撮った目黒川の桜。手ブレ補正のついてないレンズで1/13秒だったが、欄干にのっけてたおかげでブレずに撮れた。橋の真ん中に立つと、両岸から桜がほわっとせり出てきてて圧巻である。圧巻だが、ライトアップも何もされてないので実に暗い。そういうときでも無理矢理明るく撮るのである。
上の写真だとISO感度はISO3200まであげ、シャッタースピードは1/3秒。あとは、ポケット三脚さんよろしく、と祈りつつ、何枚も撮った。
たくさん撮って手ブレしてないのを選ぶ、という意味もあるが、シャッタースピードが遅くなると桜の枝がどうしても風で揺れる。端っこの枝が揺れててもいいけど、中央部はあまり揺れて欲しくない。でも風のタイミングはこちらではなんともしょうがないので、何カットも取っておき、あとから被写体ぶれしてないのを選べばいいのだ。
もう空がまったく見えないくらいびっしりと桜が咲いてて圧巻でした。昼よりも夜の方が迫力があってお勧め。
ちなみにホワイトバランスをオートにして撮るとこうなる。
オートホワイトバランスで川の桜を
どっちがいいかはもう好み。いずれにせよ、こういう迫力のある夜桜は面白い。
お次は縦位置で。水面に街灯が映ってゆれていたので、それを意識して撮ってみた。真っ暗な水面に灯りが映っているのを意識した桜。
個人的にはきれいにライトアップされた桜より、いつもの街のあかりでほんのり照らされている方が好き。
で、夜桜見物や散策に集まった人たちはみな思い思いに桜を取っていて、その姿がまたいい。花を愛でる人が一緒に写り込むと、写真の雰囲気がガラッと変わる。
なんか今回は、桜を取るといいつつネイチャーフォトじゃなくて、桜のある街の写真がテーマになってしまったけど、個人的には桜の木自体より、桜がある風景を撮る方が好きだったりするのでご勘弁を。
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