高倍率ズームで迫る金属フェティシズム――タムロン「14-150mm F/3.5-5.8 Di III」:交換レンズ百景
シビアに構図を追求するなら高倍率ズームが便利。マイクロフォーサーズ用の小さな高倍率ズームを用いて、切り詰めたフレーミングで金属オブジェの造形美に迫ってみた。
メタリックな質感をくっきりと再現する描写力
高倍率ズームの魅力は、言うまでもなく利便性の高さだ。レンズ交換をせずに広角から望遠までを使い分けることができ、さまざまな構図のバリエーションが楽しめる。荷物がコンパクトにまとまるので、フットワークを重視した旅スナップや速写性を優先したイベント撮影などにも最適だ。
今回使用したのは、そんな数ある高倍率ズームの中でも特に携帯性が際立った1本、タムロンの「14-150mm F/3.5-5.8 Di III(Model C001)」だ。同社では初となるマイクロフォーサーズ規格に準拠したレンズであり、35ミリ判換算の焦点距離は28〜300ミリ相当に対応。小型軽量ながら、レンズ8本分の働きを兼ねた便利ズームである。
上の写真は、テーマパークに展示された西洋甲冑をクローズアップで捉えたもの。外部ストロボを照射しつつ、切り詰めたフレーミングを選んで造形美を強調した。周辺部以外はくっきりと解像し、金属の硬質な素材感がリアルに再現されている。
このレンズは接写に強いことも魅力だ。最短の撮影距離はズーム全域で50センチを誇り、最大の撮影倍率は1:3.8に対応。マクロレンズの代用として、ちょっとした接写もこなせる。
レンズのサイズは、全長が80.4ミリで最大径は63.5ミリ。テレ端にズームすると先端部がせり出し、全長は約124ミリまで伸びる。重量は285グラムと軽く、フィルター径も52ミリと小さい。今回はオリンパス「OM-D E-M5」に装着して使用したが、ボディとのバランスはよく、取り回しは快適に感じた。
ちなみにマイクロフォーサーズ用の高倍率ズームといえば、オリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 14-150mm F4.0-5.6」や、パナソニック「LUMIX G VARIO 14-140mm/F3.5-5.6 ASPH./POWER O.I.S.」が以前から発売されている。本レンズは、オリンパス製品に比べるとワイド側の開放F値がやや明るいこと、パナソニック製品に比べるとテレ側の焦点距離がやや長いことが特長だ。サイズと重量についても若干違いがあるが、いずれも小型軽量と呼べる範囲内だ。
自由なフレーミングが選べるズーム比10.7倍の魅力
外装には高品位な金属素材を採用する。鏡胴部にはラバーが張られた幅広のズームリングがあり、その手触りは良好だ。トルクはやや重め。自重で動くことはなく、任意の位置できっちりと止まる。
フォーカスリングについては幅がやや狭いのが気になったが、操作感は滑らかだ。AFはほぼ無音でスムーズに作動する。
写りは、高倍率ズームとしては良好なレベルだ。広角側の開放値で周辺部にやや甘さが見られるが、広角側の中央部、およびズームの中間域から望遠側にかけては精細な描写が得られる。また、色収差や開放値での周辺減光が少しあるが、いずれもRAW現像時に簡単に補正可能な範囲といえる。
次の2枚は、ズームの中間域を使用して、絞り開放値付近で撮影したもの。ピントを合わせた部分はシャープな写りとなり、薄暗いシーンながらメリハリ感のある写真となった。
注意したいのは、本レンズは手ブレ補正機構を搭載していないこと。ボディ内手ブレ補正に対応したオリンパス製ボディなら問題はないが、「DMC-GX7」以外のパナソニック製ボディの場合は、高感度や三脚、ストロボを活用するなど暗所ではそれなりのブレ対策を心がけたい。
約1週間の試用期間中、携帯性のよさを生かしてさまざまな場所に本レンズを持参したが、どんな場所からでも狙いどおりの構図で撮影できるフレーミングの自由度を実感できた。と同時に、レンズ交換の手間から解放されることで、その分、被写体選びや構図決めに気持ちを集中できるメリットも感じた。そんなレンズである。
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