高倍率ズームで撮る夜の巨大建造物――タムロン「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD」:交換レンズ百景
ライトアップされた巨大オブジェや工場群、電飾階段など絵になる光景を求めて夜の街をさまよった。そんな行き当たりばったりの風景撮影では、フルサイズ対応の高倍率ズームが重宝する。
切り取る感覚で自由なフレーミングが楽しめる
高倍率ズームのメリットの1つは、自由な構図で撮影しやすいこと。例えカメラポジションが限られた狭い場所であっても、近くまで寄れない被写体であっても、ズームリングを回すだけで「引き」の構図から「寄り」の構図まで自在に選べる。
一方で開放値が暗いという弱点があるが、高感度に強いフルサイズ一眼なら、その弱点もあまり気にならない。つまり、フルサイズに対応した高倍率ズームこそ、利便性の面で最強といえるのではないだろうか。今回は、そんなフルサイズ用の高倍率ズーム、タムロン「28-300mm F/3.5-6.3 Di VC PZD(Model A010)」を使って、街中にあるさまざまなオブジェや建造物を撮り歩いてみた。
上の写真は、公園に集う人たちを見下ろす構図で捉えたもの。ズーム調整によって周辺にある無駄な空間をカットし、オブジェと観客、そして赤く染まった雨上がりの空によって画面をまとめた。絞りは、被写界深度を深くし、近景から遠景までの広範囲にピントを合わせるためにF16に設定。ライトアップされたFRP製のオブジェはシャープに解像し、立体感のある描写となった。
続いて訪れたのは、夜の工業地帯だ。工場設備という被写体も撮影場所が限られるため、高倍率が役に立つ。下の写真は、ズームの中間域を使用して凝縮感のある画面構成を狙ったもの。気になった部分のみを切り取る感覚でフレーミングできるのは、高倍率ズームの醍醐味だ。
レンズ先端からマウント面までの長さは実測値約99ミリで、テレ端までズームアップすると、先端部がするするとせり出し、長さは約176ミリになる。レンズの重量は540グラム。開放値が異なるので単純な比較はできないが、同じ焦点距離を持つニコン「AF-S NIKKOR 28-300mm f/3.5-5.6G ED VR」に比べると260グラムも軽い。APS-Cサイズ用の高倍率ズームと大差ない、この軽さは本レンズの大きな魅力だ。
さらに、簡易ながら防滴構造であることもありがたい。これらの工場カットは小雨の中での撮影だったが、鏡胴にかかる水滴に神経を使わず、撮ることだけに専念できた。
静かでスムーズなAFと強力な手ブレ補正機構
ズームリングの感触はやや固め。自重で伸びきってしまうことはない。一方でフォーカスリングの感触はやや軽め。リングの幅が狭いため、マニュアルフォーカスの操作は快適とはいえないが、回しにくいというほどではない。ズームリングおよびフォーカスリングの回転方向は、キヤノン純正とは逆でニコン純正と同じになる。
レンズ側面には、AF/MFの切り替えスイッチと、手ブレ補正ON/OFFの切り替えスイッチを装備する。AFは、超音波モーター「PZD(Piezo Drive)」によってスムーズに作動する。手ブレ補正については、同社製品でおなじみの「VC(Vibration Compensation)」を搭載。その効果は優秀で、ズームの300ミリ側を1/10秒の低速シャッターで手持ち撮影しても、ほとんどのカットをブラさずに捉えることができた。
写りは、開放値では周辺部に甘さと光量低下が見られるが、絞りを1〜2段絞り込むことで改善できる。また、28ミリ側ではタル型の歪曲、50ミリ以上では糸巻き型の歪曲がやや目立ち、色収差もそれなりに見られる。気になる場合はRAW現像の際に補正するといい。こうした写りのクセを知った上で使いこなせば、十分に納得できる描写が得られる。
今回の試用では「EOS 5D Mark III」に装着して使ったが、より小型軽量なキヤノン「EOS 6D」やニコン「D610」などと組み合わせれば、本レンズの携帯性のよさはさらに際立つはず。フルサイズ画質をいっそう気軽かつ自由に楽しませてくれるレンズとして、スナップから風景、ポートレートまで幅広く役立つだろう。
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