写欲をかき立てる、存在感を持った広角単焦点――オリンパス「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」:交換レンズ百景
明るく高性能な単焦点レンズには、ズームレンズとは違った魅力がある。とりわけ美しいボケ味と切れのある描写は、単焦点レンズならではで、撮影もより楽しくなる。今回はコンパクトなボディのOM-D E-M10と12mmレンズだけを持って出かけてみた。
撮影には高性能なズームレンズを持っていく人が多いと思う。最近のズームレンズは明るく写りもよいし、ワイドから標準域、そして望遠まで、焦点距離の「切れ目」をなくすことができるので何かと安心感もある。そんなレンズシステムの中に、より明るく高性能な単焦点レンズを組み込んでみると撮影がより楽しくなってくる。ボケ味も美しいし、なによりもキレがあるので写真にメリハリが出るからだ。時にはズームレンズを持っていかず、単焦点レンズだけで撮影するという潔さも捨てがたい。というわけで今回はオリンパスの「OM-D E-M10」に「M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0」の1本のみを付けて撮影に出かけてみた。「オリンパス製品を使うの久しぶりだな」と思ったらこのレンズ以来なので、実に1年以上ぶりだったのである。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2.0はとてもコンパクトながら存在感を放っている。金属外装による高い質感と、ギュッと詰まった塊感は写欲をかき立ててくれるオーラがある。今回使用したブラック外装のモデルは、同じブラックボディのE-M10とよく似合う。若干価格が高いが、是非同色のレンズフードもそろえて装着したいものだ。
このレンズの最大の特長はF2.0という明るさだろう。35ミリフィルム換算で24ミリ、しかもF2.0というのは室内などの狭いスペースや暗所、そして風景写真に絶大な威力を発揮するはずだ。開放域での浅い被写界深度を生かしての絵作りや描写もなかなかのもの。ZEROコーティングのおかげで太陽を画面内に写し込んでもいやなゴーストが発生せず、描写も良好であった。
秋の深まりを感じられる里山の風景。35ミリフィルム換算で24ミリという画角は風景撮影のスタンダードレンズと言ってもいいだろう。若干線が太い印象があるものの、木々の描写と色再現が頼もしい。
OM-D E-M10の可動式液晶モニターをおこして、湖畔で白鳥をローアングルで狙った。白鳥の表情から羽毛のディテール、そしてたくましい足の水かきまでしっかりと写しとっている。小型軽量のレンズとボディの組み合わせなので、ローアングルの無理な体勢でも疲れることがない。
秋花の代表格・コスモスをハイアングルで。24ミリなのでイージーに撮影。淡い色合いと細かい葉の様子がいい感じ。ボケは若干つぶれて写るような印象だ。
24ミリというパースペクティブを生かしたカットは迫力がある。水路を渡る橋をシルエット気味に印象的に撮影してみた。くっきりとコントラストもあるなか、シャドウ部のディテールもしっかりと残されている。遠景そして水面の立体感もなかなかのもの。
東京湾の向こうに沈みゆく夕陽。そしてその傍らにはぼんやりと富士山が。コッテリとした色再現性と階調の豊富さは、秋から冬へと移り変わる微妙なニュアンスだろうか。このレンズはその雰囲気をしっかりと写しとってくれた。
すっきりと秋らしい青空に白い雲が浮かんでる。土手を画面下部に配して、空で画面のほとんどを構成してワイド感を出してみた。広々とした場所で、より広大な感じを出すのにもこのレンズは活躍する。
コンパクトなレンズはコンパクトなボディにマッチする。このレンズ1本だけ付けてブラブラするのも悪くない。肉眼より少しワイドな視点で風景を楽しむのだ。少し絞り込んでやれば被写界深度も深くなるし、描写も向上する。
アンダー目の描写もいい雰囲気だ。少し湿り気を帯びたグレーの雲と、風にそよぐススキの存在感がどことなくいい。ワイドレンズはメリハリとバランスに注意して構図を決めよう。
開放F2.0ならば太陽が沈んだ少し後でも余裕で撮影ができる。開放でのボケ味と柔らかい描写を楽しむには最適な時間帯だ。ボディ内手ぶれ補正機構を持つE-M10とは相性抜群である。ズームレンズだけではなく、明るい“プライムレンズ”を是非とも楽しんでほしい。
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