テレ端450ミリ超を気軽に持ち歩く――シグマ「18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM」:交換レンズ百景
シグマから発売されたAPS-C専用の16.6倍ズームレンズ「18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM」は、広角から望遠域まで、焦点距離が途切れずレンズ交換なしで使える手ごろなレンズだ。
特に撮るものを決めずにブラリと撮影に出る場合、一眼レフカメラにどのレンズを付けていこうか考えるときがある。明るい単焦点レンズ1本にしようか、それともF2.8通しの高性能ズームレンズをワイド、標準、望遠と3本セットで持っていこうか、高倍率ズーム1本で行こうか、などと迷うのだ。特にアテもなくブラブラ歩くときは、やはり高倍率ズームがお手軽なのでついチョイスしてしまう。開放F値と画質が若干犠牲になるが、フットワークのよさと、広角から望遠域まで焦点距離が途切れずレンズ交換なしで使える点で、高倍率ズームを選択する価値は十分あると思う。
そこで今回はシグマから登場した「18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM」をキヤノンの「EOS 70D」に装着してブラブラと撮り歩いてみた。以前インプレッションした「18-200mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSM」の兄貴分とも言えるレンズである。
使用して実感したのは、テレ側が100ミリ違うと視点が大きく変わってくる、ということである。APS-C専用レンズなのでメーカーによって倍率が異なってくるが、450ミリ相当(試用したEOS 70Dの場合は1.6倍なので480ミリ相当)の画角を気軽に持ち運べるというメリットはかなり大きい。テレ端での迫力というか押し出し感がググッと出せる印象を受けた。撮る被写体も増えてくるし、望遠ならではの楽しみが増えたように思えた。
画質も16.6倍という高倍率ながら、FLDガラスを4枚、SLDガラスを1枚採用するなど、シグマらしい、光学性能に妥協のない製品となっている。各社ともこのクラスのレンズをラインアップしているが、性能とデザイン、そして別売りにはなるがSIGMA USB DOCKで各種設定がカスタマイズできる点、そしてマウント交換サービスも用意される点を考慮すると、ちょっとこのレンズに食指が動くのではないだろうか。
年末年始の旅行やブラブラフォトウォークには、この18-300mm F3.5-6.3 DC MACRO OS HSMと、プラスしてお気に入りの明るい単焦点を1本持っていけばOKだろう。
旧ロゴ「KAWASAKI」のモーターサイクルと見つけた瞬間、スッと300ミリにズーミングしてタンクとシリンダーヘッドを切り取った。高倍率ズームなら思いのままに撮ることができる。
近接撮影でもこのレンズは威力を発揮する。最短撮影距離39センチなので、単体でもマクロレンズのように撮れるが、別売のクローズアップレンズ「AML72-01」を使えば、画質の低下を最小限にして最大撮影倍率を1:3から1:2にできる。
明るい日射しが差し込む古民家の部屋。このレンズは意図通りにクリアでシャープな像を提供してくれた。
高倍率ズームというと描写が甘い、という印象を持つ人が多いが、このレンズのテレ側はなかなかのもの。高感度ながら生糸のディテールがしっかりと出ている。
単焦点レンズと比較すると、ワイド端で周辺にごく若干甘さが残る傾向が見られるものの、少し絞ってやれば改善するレベルである。
常にボディに装着しておけるギリギリのサイズと重さだと思われるが、この1本でこれだけの広範囲をカバーできるのは魅力である。旅行やフォトウォークでは外せないレンズと言えるだろう。ワイド端での歪みはクセがなく標準的なものだ。
クリアでエッジの立った描写はとても素晴らしい。微妙なクルマのカラーも忠実に再現している。後ボケも素直な印象だ。常用高倍率ズームとして推したい1本に仕上がっていると思う。
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