全域F2.8の明るさを誇る超ワイドズーム――ケンコー・トキナー「AT-X 11-20 PRO DX」:交換レンズ百景
ケンコー・トキナー「AT-X 11-20 PRO DX」は、開放F値の明るさと取り回しのよさを兼ね備えたAPS-Cサイズのセンサーに対応した超広角ズームだ。広角特有の遠近の強調効果を生かして、肉眼とは違った雰囲気で街の風景を切り取ってみよう。
開放値を継承しつつテレ側の焦点距離を拡張
ケンコー・トキナーから、トキナーブランドの新レンズとしてAPS-Cサイズ用の超広角ズーム「AT-X 11-20 PRO DX」が登場した。焦点距離は11〜20ミリで、35ミリ判換算の焦点距離は16.5〜30ミリに対応する(ニコン用の場合)。レンズの開放F値は、このクラスの製品では稀少なズーム全域でF2.8を誇る。
同社はこれまでにも、同じく全域F2.8を実現したAPS-Cサイズ対応の超広角ズームとして、2008年に「AT-X 116 PRO DX」を、その後継として2012年に「AT-X 116 PRO DX II」をそれぞれ発売している。これら既存モデルの焦点距離は11〜16ミリで、35ミリ判に換算すると16.5〜24ミリ相当だった(ニコン用の場合)。明るい開放F値は大きな魅力だが、それと引き替えにズーム倍率は低めに抑えられていた。
そこで今回のレンズでは、光学系を一新してテレ側の焦点距離を16ミリから20ミリへと拡張。ズーム倍率でいうと、約1.45倍から約1.81倍へとアップしている。
外観のデザインと操作性は、既存モデルから多くを継承する。鏡胴の外装は、表面にレザートーンを加えたツヤ消しの黒。アクセントとして先端の外周に金のシールを巻き付け、引き締まった印象を作り出している。
フォーカスリングとズームリングにはそれぞれ形状が異なるラバー素材を装備する。フォーカスリングを手前にスライドさせることでAFからMFへと移行する「ワンタッチフォーカスクラッチ」も受け継いでいる。
サイズは、最大径89ミリで全長92ミリ。重量は560グラム。既存レンズ「AT-X 116 PRO DX II」に比べるとやや大きくなり、重量は10グラム増えているが、それでも大口径ズームとしては比較的コンパクトで軽量だ。
フィルター径は82ミリ。前玉が突出していてガラスフィルターが装着できないタイプの超広角ズームとは違って、保護フィルターやPLフィルターが使えるのはありがたい。ただし、径82ミリのフィルターはそれなりに高価である。
最初の写真は、ズームのワイド端を使って遊園地の風景を見上げるアングルで捉えたもの。超広角ならではのパースペクティブの強調効果を利用し、巨大観覧車の迫力と造形を際立たせている。
次の写真は、撮影ポジションを少し変えて同じ被写体をズームのテレ端で写したもの。構図に変化を与えるには、このズーム域の広さが役に立つ。
16.5ミリ相当というワイドな焦点距離は、広々とした風景や巨大な建造物の撮影のほか、狭い場所の全体を撮る際にも活躍する。
素材の質感をくっきり再現する精細な描写力
写りは、被写体のディテールをくっきりと再現するシャープネスとコントラストの高さを確認できた。11ミリ側の開放値では周辺がやや甘いが、絞り込むことで四隅までキレ味のある描写が得られる。また樽型の歪曲と開放値での周辺減光も多少見られるが、超広角ズームとして特に大きいわけではなく、後処理で補正できるレベルといえる。
次の写真は、11ミリ側を使って流線型の車体をいっそうグラマラスに表現したもの。ピントを合わせたタイヤやホイールの部分は、その素材感をリアルに描写できている。
建物の手前に外灯を写し込むことで、画面に奥行きを与えて撮影。モノクロモードを選んでも、解像感の高さが引き立つ。
最短の撮影距離は、既存レンズ「AT-X 116 PRO DX II」の30センチよりもさらに短縮し、28センチを実現。最大撮影倍率は1:8.62となる。
「AT-X 11-20 PRO DX」の最大の魅力は、F2.8という明るさと高解像な描写力を継承しつつ、焦点距離の拡張によって使い勝手を高めたことだ。風景や建物、星空、スナップなどをシャープに撮影したい一眼レフユーザーにおすすめできる。
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