豊かな描写を見せる中望遠レンズ――富士フイルム「XF90mm F2 R LM WR」:交換レンズ百景
富士フイルムのXレンズラインアップでは5本目の「WR」レンズとなる「XF90mm F2 R LM WR」は、ポートレートから風景まで、幅広いジャンルで活躍する中望遠レンズだ。
富士フイルムから防じん防滴耐低温構造の明るい単焦点レンズ「XF90mm F2 R LM WR」が登場した。35ミリ判換算で137ミリ相当となるこのレンズは、開放から実にシャープなキレ味を持っていた。
このレンズは「WR」の名が示すように「防じん防滴耐低温構造」を採用。鏡筒各部7カ所に施されたシーリングによって、厳しい条件下での撮影が可能になっている。今回使用した「FUJIFILM X-T1」との組み合わせで、アウトドアスポーツや風景など、風雨や埃、気温の影響を大きく受けるシーンでも安心して撮影できる仕様が嬉しい。レンズの造りも非常にしっかりとしており、各リングの動きもとてもスムーズだ。
写りも開放からとてもシャープで素晴らしい。レンズ構成は8群11枚(EDレンズ3枚含む)となり、新開発の「クアッド・リニアモーター」によるオートフォーカスも高速で正確だ。このレンズは最短60センチまで寄れるのだが、その近景から遠景までストレスなくピントが合い、美しい描写を見せてくれた。137ミリ相当という長さはポートレートはもちろん、静物から風景などあらゆるジャンルで重宝するだろう。このレンズのような豊かな描写を見せるレンズは特にだ。
手前の木々をぼかしつつ、石造りの塔を撮影した。137ミリ相当とあって前ボケがとても美しい。また塔のヒビ割れなどディテールも非常によく写し取れている。
もちろん後ボケも美しい。被写体と背景との距離をとれば、上品なボケ味を楽しむことができる。
ポートレートでこのレンズは本領を発揮する。瞳から肌、ネックレスまで富士フイルムらしい安定した写りを見せてくれた。しっとりした色合いも同社ならではである。
エッジの立ったシャープな写りは風景写真でも絶大な効果だ。台風が接近中の灯台を絞って撮ったが、そのタイルの質感からダイナミックに舞う飛沫まで、リアルにキャプチャーできた。こういう波しぶきが飛び交う場面でも「WR」レンズなら安心である。
開放での描写はとてもいい。レースの細かい目のディテール、左の束ねられたカーテンのやや重たそうな感触まで伝わってくるようだ。色再現も見た目に忠実で好感が持てる。
夏といえば氷だが、そののぼりを爽快感あふれんばかりに撮ることができた。生地の立体感はもとより、色のりがとてもよく印象的な写真となった。
このレンズは60センチまで寄れるのも特長だ。テーブルフォトや商品撮影でも活躍することだろう。開放でソロバンに寄ったが品のあるボケと色合いがいい感じとなった。
スキップをするモデルを空ヌケで。新しくなったAFシステムのおかげで、X-T1との組み合わせでいい瞬間を撮ることができた。F2と明るいレンズなので、薄暗い環境でのスポーツ撮影でも使えそうだ。
(モデル:辻祐香 オスカープロモーション)
(編注:本記事では一般的な撮影状態での利用を念頭に置いているため、人物撮影にレフ版などは利用しておりません)
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