本格的な映像作品にも手が届く超高感度ミラーレス機――ソニー「α7S II」(1/3 ページ)
超高感度ミラーレス機「α7S」の後継機にふさわしい、豊かな階調表現とダイナミックレンジの広さが魅力のソニー「α7S II」。新たに追加されたボディ内手ブレ補正機能と、大幅に強化された動画機能に確かな手応えを感じた。
α7三兄弟の末っ子「α7S」もmark IIになり、「α7S II」として登場した。初代「α7」は2013年11月、高画素版の「α7R」も同じ日に発表された。翌2014年の6月には画素数を抑えて高感度に振ったα7Sが登場する。そして12月に「α7 II」、翌2015年8月に「α7R II」、10月に「α7S II」と一気に6兄弟に増えたのだ。もう、見た目も似てるので、これは「おそ松さん」かと思ってしまうレベル。ボディのデザインが共通化されているとはいえ、このハイエンドクラスのフルサイズ機をこれだけ立て続けに出すとは恐るべしである。
α7S IIは他のmark IIシリーズ同様、ボディ内手ブレ補正の追加が行われたほか、動画機能が大幅に強化された。α7Sは4K動画対応とはいえ外付けのユニットが必要だったが、α7S IIは単体での撮影が可能になった。そのあたりを念頭に置きつつ、あれこれいじってみたのである。
高感度もすごいがダイナミックレンジもいい
α7Sといえば超高感度ミラーレス、という側面からはじめないとどうしようもないだろうということで、そこから。α7S IIのセンサーは35ミリフルサイズで約1220万画素。α7Sと同じで、ISO感度は100から最高で102400。さらに拡張感度設定を行うと最高でISO409600にまで上げられる。
フルサイズで1200万画素なのはα7Sだけなのだ。他社を見てみると、ニコンは「D4S」や「Df」で約1600万画素、キヤノンは「EOS-1D X」で約1800万画素とハイエンド機、特にD4SやEOS-1D Xのようにスポーツ系に強いモデルで画素数を抑えてきてるのはその用途を考えると分かるのだが、α7Sはそういう系列のカメラじゃない。
そこが面白い。センサーサイズに比べて画素数が少ないということは、高感度に強いだけじゃなく、理屈でいえばダイナミックレンジも広くなるわけで、より階調の豊かな写真が期待できるのだ。確かにハイライト部の飛び方が滑らかで不自然さがない。これはいい。こんな太陽が入るシーンでも階調がきれいに出てる。
右上に黒い汚れがあるのは撮影時にセンサーの汚れに気付かなかった当方のミスなので気にしないよう。暗所ではどうかというと、これでISO20000。
夜の街でポートレート。さすがにディテールはややつぶれてざらつきはあるが十分使えるレベル。
α7Sからの進化点としてはα7 II系共通の5軸手ブレ補正がある。α7S系は高感度に強く、ISOオート時も比較的シャッタースピードを維持しつつ感度を上げていくので、ボディ内手ブレ補正の必要性は他のシリーズに比べて高くはないけれども、ISO感度をコントロールしたり、夜間に絞って手持ちで撮ったりと、撮り方に自由度が増すのは確か。手ブレ補正非搭載の単焦点レンズや、Aマウントのレンズ、さらにマウントアダプターを介した他社のレンズやオールドレンズでも手ブレ補正が効くのはすばらしい。特にAマウントのレンズ資産を持っている人に朗報だろう。
またISOオートは低速限界をSlowerからFasterまで5段階で選べる。1段階遅くするとシャッタースピードの低速限界が1段遅くなる感じで、ざっと使ってみた感じ、レンズ内やボディ内手ブレ補正を考慮すると、1段分遅くしてもいいくらいだ。
グリップ部が変更され、α7Sよりも使いやすくなった
ボディデザインはα7 II系デザインを踏襲。前モデルとはグリップ回りの構成が変わって、グリップしやすくシャッターも押しやすくなっているのが特徴だ。
このマウント径でフルサイズセンサーを入れてなおかつボディ内手ブレ補正も実現しているというのがすごい。グリップ部のデザインがα7Sから変更され、より使いやすくなった(何度か、前ダイヤルを回そうとして電源を切っちゃって焦ったけど)。
ファインダーは約235万ドットのEVFで、ファインダー倍率が約0.71から約0.78へと上がり、圧倒的に大きく見やすくなった。
背面モニターは上下に動くチルト式で3.0型、約123万ドット。相変わらずタッチパネルは非搭載。
個人的にはタッチパネルは測距点を感覚的に指定できて便利なのだが、どうなんだろう。タッチパネルがないのなら十字キーをダイレクトフォーカスポイント移動に割り当てられるなど、AF測拠点をさっと動かせる機能は欲しいところだ。
フォーカスポイントを動かすにはまずフォーカスエリアモードにして前後のダイヤル(これは慣れれば便利)か十字キーを使うという2ステップが必要になる。これはちょっと不満。
操作系はさすがハイエンド機。前後に電子ダイヤル、上面に露出補正ダイヤルがあり、さらに背面のホイールとC1〜C4のカスタムボタンと中央ボタンには任意機能を割り当てられる。背面のホイールはデフォルトでは未設定だが不用意に回してしまいやすい場所だからだろう。
AF関連だけでフォーカスセット、フォーカスモード、フォーカスエリア、顔検出、瞳AFとフォーカス系の機能が多くあるのでうまく割り当てたい。
カメラ内でアプリを実行できる「PlayMemories Camera Apps」、オートフレーミング、DROやHDR、さまざまなシーンセレクションなどは他のαシリーズと同様だ。美肌機能もしっかり搭載している。
あとでどのモードだか分からなくなるといけないので、メモと一緒に。思い切り逆光のシチュエーションで美肌をめいっぱいかけてみた
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