フルサイズ500mmで切り取る超望遠の世界――ニコン「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」:交換レンズ百景
焦点距離500mm対応の純正レンズは高価で手が届かない……。そんな既成概念を打ち破るリーズナブルな超望遠ズームが登場。500mmならではのピンポイントな視点で眼前の風景を切り取ってみよう。
手持ちでも楽しめる強力な手ブレ補正
一般ユーザーにとっての望遠ズームといえば、テレ端の焦点距離が200mmまたは300mm程度の製品が主流だ。それ以上に長いものは価格や取り扱いの面で少々ハードルが高くなる。だが400mmや500mでのぞいた世界は、200〜300mmクラスとはひと味違った視覚体験であり、写真撮影を趣味にするなら、いつかは挑戦したいと思っている人も多いだろう。
そんな超望遠の入門者に最適なレンズが、今回取り上げるニコン「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」だ。フルサイズのFXフォーマットに対応した同社AF-Sの現行ズームレンズでは、最も長いテレ端500mmを実現した製品である。発売は2015年9月。希望小売価格は18万9000円(税込)となる。
ちなみに同社の超望遠ズームには、これ以外に「AF-S NIKKOR 80-400mm f/4.5-5.6G ED VR」(税込33万4800円)や「AF-S NIKKOR 200-400mm f/4G ED VR II」(税込108万円)などがある。開放値や焦点距離が異なるので単純には比べられないが、本レンズは比較的リーズナブルな価格が大きな魅力になっている。
機能面で注目したいのは、CIPA規格準拠で4.5段分の手ブレ補正を内蔵したこと。今回の試用では、ズームの500mm側を使った場合、シャッター速度1/30秒で約95%、1/15秒で約60%のカットをブレなしで撮影できた。
次の写真は、温室のスイレンをシャッター速度1/40秒で手持ち撮影したもの。重量2キロを超える重めのレンズなので、気軽に振り回すわけにはいかないが、こうした狭い場所では三脚なしで扱えることがありがたく感じる。
次も同じく1/40秒を手持ちで撮影。ホワイトバランスを「蛍光灯」に、ピクチャーコントロールを「ビビッド」に設定し、日没直後の空色を鮮やかに表現した。
写りは、絞り開放値からのシャープで高コントラストな描写を確認できた。200mm側に比べると500mm側の開放値は周辺がわずかに甘いが、それでも十分に実用レベルといえる。さらに1段絞ると切れ味が増し、四隅までくっきりと写る。色収差や周辺減光も気にならない。
次は、最短撮影距離の2.2メートル付近で撮影。羽毛の1本1本を確認できるくらいシャープに解像している。水面などボケ部分の描写はクセがなく素直だ。
動き回る被写体にも追従するAF性能
外形寸法は、最大径が108mmで、全長が267.5mm。500mm側までズームするとレンズの前玉が約77mmほど繰り出す。フィルター径は95mm。質量は、三脚座を含めて約2300gとなる。
レンズの側面には、フォーカスモード切り替えスイッチのほか、フォーカスリミッター、手ブレ補正のオン/オフ、手ブレ補正のモード選択の各スイッチを装備している。手ブレ補正のモードは、通常の「NORMAL」と動体撮影に適した「SPORT」の2つが選べる。
AFについては、より高価でワンランク上の望遠ズームには及ばないものの、ストレスを感じない速さで作動する。D750との組み合わせでは、動き回る鳥や動物に対して確実に追従するAF性能を実感できた。惜しいのはズームリングの回転角が大きく、素早いズーミングが少々やりにくいこと。回転の感触自体は悪くない。
今回の試用では、500mmならではの遠近の圧縮効果や、遠景を引き付けるような撮り方を存分に楽しむことができた。
持ち運びにはそれなりの覚悟が必要になるサイズと重量であり、手持ちによる長時間の撮影は私には正直きつい。だが、同じ超望遠ズームでも開放値が1段明るい「AF-S NIKKOR 200-400mm f/4G ED VR II」は、全長365.5mmで、重量は3キロ以上もあるので、それに比べれば小さくて軽いという見方もできる。
何より、ふだん使っている200〜300mmクラスのズームレンズとはちょっと雰囲気が異なる非日常的な1枚が撮れたなら、この大きさと重さを我慢して持ち歩いた甲斐があった。そんなふうに、撮るたびに達成感と満足感が得られるレンズである。
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