憧れのフルサイズ大口径ズームが手の届く価格で登場――トキナー「AT-X 24-70 F2.8 PRO FX」:交換レンズ百景
フルサイズの一眼レフ所有者なら、全域F2.8の大口径ズームに憧れを抱いている人は少なくないはず。そんな人に最適な1本、トキナーブランドの大口径標準ズームを使ってみよう。
ぜいたくなレンズ構成がもらたす高解像な描写力
ケンコー・トキナー「AT-X 24-70 F2.8 PRO FX」は、35mmフルサイズに対応した大口径標準ズームだ。ワイド端24mm、テレ端70mmという使用頻度の高い焦点距離を備えつつ、開放値はズーム全域でF2.8の明るさを誇っている。まさに王道と呼べる正統派のレンズである。発売は2015年。ニコン用は6月に、キヤノン用は7月にリリースされた。希望小売価格は15万円(税別)となっている。
まず注目したいのは、ガラスモールド非球面レンズ3枚や超低分散ガラス3枚などをぜいたくに使用することで実現した高コントラストで切れ味ある描写だ。1枚目はズームの24ミリ側を使い、絞りをF9まで絞り込むことで近景から遠景までをシャープに表現したもの。隅々まできちんと解像し、橋の重厚感とスケール感を際立たせることができた。
次は70ミリ側までズームアップし、ちぎれた雲が観覧車にバランスよく重なるように画面を切り取った。描写にはメリハリがあり、平たんな構図ながら立体的で奥行きを感じる写真となった。
開放値の描写も見てみよう。次の3枚は、絞り開放値を選択。合焦部分はくっきりと写り、そこから前後に向かって滑らかなボケが生じている。周辺減光や色収差、光のにじみは多少見られるが、フルサイズ用の大口径標準ズームとして特に目立つほうではない。
おなじみワンタッチフォーカスクラッチ機構を採用
外装は剛性を感じる頑丈で高品位な作りだ。最大径は89.6mmで、全長は107.5mm。フィルター径は大きめの82mm。重量は、この焦点距離と開放値のレンズとしては比較的重い1010g。手にするとずっしりとした重みが伝わってくる。
操作面での特長は、同社レンズではおなじみのワンタッチフォーカスクラッチ機構を採用したこと。これは、フォーカスリングを手前にスライドさせることで、AFからMF(マニュアルフォーカス)へと素早く移行する仕掛けだ。力の入れ方によっては引っ掛かるような印象を受ける場合があるが、リングを斜めに傾けずに真っすぐにスライドさせることが、スムーズな切り替えのコツといえる。
AFは、速度自体はあまり速くないが、超音波モーターSDMによって滑らかにかつ静かに作動する。MFについては、フォーカスリングの回転に一定の程よいトルクがあり、操作感は悪くない。
ズームリングはやや重めで、回転角は大きめ。24ミリ側から70ミリ側までズームアップすると、前玉部分は約4センチ繰り出す。リングの回転方向は、ニコン純正レンズとは逆で、キヤノン純正レンズと同じになる。
最短の撮影距離は38センチで、最大倍率は1:4.73。このクラスのレンズでは標準的な接写性能だ。次のカットは、高さ約10センチの小物を最短距離付近で捉えたもの。背景に見える街の明かりをきれいな玉ボケとして表現できた。
最後のカットは絞りをF13まで絞り込み、パンフォーカス状態でスナップした海辺の1コマだ。ゆがみやにじみはほとんどなく、水面のディテールまでをリアルに解像。その場で感じた晴天のすがすがしい雰囲気を狙い通り写真に収めることができた。
今回の実写では、開放値から安心して使える高解像な描写と、全域F2.8が生み出す滑らかなボケ表現を楽しめた。鏡胴が大きくて重いことや手ブレ補正非搭載であることは、良好な光学性能とトレードオフの関係で仕方ないところ。写りに対する満足感は高い。
ニコンやキヤノンの純正大口径標準ズームに比べて、やや抑えられた価格は大きな魅力といえる。フルサイズカメラの精細な描写力をきっちりと引き出し、と同時にF2.8ならではボケを楽しみたい人におすすめだ。
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