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メガネいらずの3D液晶、シャープが発表

» 2010年04月02日 17時04分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 シャープは4月2日、裸眼立体視が可能な3.4型液晶ディスプレイを発表した。2D/3Dの表示切り替えが可能で、3D表示では専用めがねをかけなくても立体的に見える。携帯電話やデジタルカメラなどのポータブル機器向けに2010年度上期から生産を開始する。

photophoto 新開発のタッチパネル付き3.4型3D液晶ディスプレイ

 裸眼立体視ディスプレイでは一般的な視差バリア方式を採用した。通常の液晶パネルの上に独自開発の「スイッチ液晶」をはり合わせ、光の進行方向を制御。右目には右目用の、左目には左目用の映像だけが届くことで視差が生まれ、立体的な映像に見える。また、視差バリアを制御して光を透過させれば、左右の目に同じ光が届くため、通常の2D表示が可能だ。

photo シャープ常務執行役員液晶事業統括兼液晶事業本部長の長谷川祥典氏

 シャープは、2002年にも3D液晶パネルの技術発表を行い、2003年から数年にわたって3D液晶搭載の携帯電話やPC、PCディスプレイなどを実際に販売してきた。しかし、「決して成功したとは言えなかった」(シャープ常務執行役員液晶事業統括兼液晶事業本部長の長谷川祥典氏)。

 長谷川氏は、過去の3D液晶搭載機器が定着しなかった理由について、「表示品位が低い」ことに加え、「モジュール厚の制約」「3D表示が一方向」という点を挙げる。「スイッチ液晶を加えた液晶モジュールは厚みを増し、携帯端末のデザイン性を損ねてしまった。そして3D表示が一方向(横)にしか対応していなかったため、PDAには採用されにくい。さらにコンテンツの不在も影響した」。

 新開発の3D液晶は、輝度を従来の2倍にあたる500カンデラまで引き上げ、明るい場所でも3Dコンテンツを楽しめるようになった。解像度も向上し、従来は64〜83ppiだった3D表示を120〜165ppiまで向上させている。「視差バリアの高精度なはりあわせ技術と作り込みにより、くっきりとした立体表示が可能になった」。さらに、タッチパネルをスイッチ液晶パネルと一体化させ、通常のタッチパネル付き液晶と同等の薄さを実現している。

  従来品 新開発品
輝度 250カンデラ 500カンデラ
解像度(2D時) 128〜166ppi 240〜330ppi
解像度(3D時) 64〜83ppi 120〜165ppi
縦/横表示対応(3D時)

 発表会場には、3D CGアニメーションを表示するデモンストレーションにくわえ、3D液晶の応用としてレンズを2つ備えた立体デジカメを展示。撮影中も背面の3D液晶パネルには立体映像が映し出されている。

photophoto 立体デジカメの展示。2つの撮像素子で捉えた映像をリアルタイムで合成、背面の3D液晶に表示している

 シャープでは、2010年上期から、まずタッチパネル機能を省略したタイプから順次量産を始める計画だ。なお、一部報道は任天堂が2011年春に発売する3D対応の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」にシャープ製の3D液晶が採用される見通しと報じているが、長谷川氏は、「引き合いはいくつもあるが、具体的な企業名は控える」として回答を避けた。

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