一昔前、コンパクトデジカメはおおざっぱにいって、コンパクトな3倍ズーム機と、大きくてかさばる10倍超ズーム機に分かれてた。そんな時代、当時としてはコンパクトな10倍ズーム機「CAMEDIA C-700 Ultra Zoom」を投入したのがオリンパスである。2001年のことだ。その後、こうした「コンパクト系10倍ズームデジカメ」に明確なコンセプトを与えたのがパナソニックだ。旅行向きデジカメとして「LUMIX DMC-TZ1」を投入したのである。比較的薄型で、広角から望遠まで1台で済む旅行に最適な「旅カメラ」と定義したのだ。
当時の技術で薄型10倍ズームを作るため、屈曲光学系と沈胴式レンズを組み合わせたユニークなレンズ構造を持っていた(ちなみに、今回の取りあげるIXY 50Sも同様の工夫をしている)のが印象深い。
以降、同様のコンセプトを持つコンパクト高倍率ズーム機が各社から登場し始め、ひとつのジャンルを確立するに至ったのだ。今回はそんな10倍超のコンパクトズームを7台ピックアップしてみた。2010年春モデルも、最新の秋モデルも混じっているが、ざっとこんな感じ。
2010年秋モデルは3台。キヤノンの「IXY 50S」はシリーズ初の高倍率ズームである。富士フイルムの「FinePix F300EXR」は15倍ズームと倍率を上げてきた。リコーはCX3のマイナーチェンジ版「CX4」。パナソニックから12倍ズームの「DMC-TZ10」。ソニーから10倍ズーム「DSC-HX5V」。この2機種は「GPSを内蔵」しているという点が他の5モデルと大きく異なっている。続いてカシオのEXILIM「EX-H15」とニコンの「COOLPIX S8000」はどちらも10倍ズーム。
・世界最薄10倍ズーム、フルHD動画も撮れる「IXY 50S」
・センサー内センサーで超高速AF実現の15倍ズーム機「FinePix F300EXR」
・GPS搭載の“旅カメラ”LUMIX、パナソニック「DMC-TZ10」
・GPSにフルHD、便利で楽しいお出かけカメラ「DSC-HX5V」
・スリムボディに10倍ズーム、カシオ「EXILIM Hi-ZOOM EX-H15」
・夜景に強い世界最薄10倍ズーム、ニコン「COOLPIX S8000」
数が多いので、まずは、概要および広角端・望遠端の風景作例から。同じ青空を撮っても機種によって微妙に色が違うし、画角の差もはっきり現れるのでそれも見比べながらどうぞ。
キヤノンは高倍率ズーム機をずっとPowershotシリーズで担い、IXYで倍率よりスタイル重視でやってきた。だが時代の波か、とうとう10倍ズームIXYが登場した。「IXY 50S」である。
IXYらしい薄型ボディに光学10倍の高倍率ズームレンズを埋め込むため、屈曲光学系と沈胴式を組み合わせた「屈曲沈胴プリズム退避鏡筒」を採用している。本体内に横向きにレンズが入っている。おかげで沈胴式レンズもほとんど飛び出さない。それにともなってバッテリも小型のかまぼこ形になった。
気になるのは2010年モデルなのに、35ミリ換算36〜360ミリと他製品に比べて広角に弱いこと。撮像素子はIXY 30Sと同じ1000万画素の裏面照射型CMOSセンサーを採用した。
シーン自動認識オート(こだわりオート)では「スポットライト」に対応した。ステージなどスポットライトを浴びた被写体を撮ると、今まではライトが当たってない場所にひっぱられて露出オーバーになるのが普通だったが、自動的にスポットライトと認識すると、明るいところに露出を合わせてくれる。これはよい。
CX3ではじめて裏面照射型CMOSセンサーを採用したリコーのCXシリーズ。「CX4」はそのマイナーチェンジともいえる製品で、外装はグリップ部の処理が変わった以外は大きな違いはない。レンズも35ミリ換算で28〜300ミリ相当とCX3と同じ。
マクロは相変わらず最強。広角端(といっても31ミリ相当くらいになるが)で1センチまで寄れるのに加えて、望遠端でもレンズ前28センチまで寄れる。300ミリ相当の望遠で28センチまで寄れるなんてCX4だけである。これは偉大。
機能面では「クリエイティブ撮影モード」に注目。ここではクロスプロセス、トイカメラなどデジタル処理をほどこすアート系フィルタ満載。これは遊べる。リコーらしいのはそれぞれに細かいパラメータ設定ができることと、通常撮影の写真も同時に残せること。連写+合成の手持ち夜景モードも搭載された。
けっこう好きなようにカスタマイズできるのもリコーらしさ。良い意味で、オートより自分でどういう写真を撮りたいかコントロールして撮るのが好きな人向けだ。
FinePix Fシリーズは高感度時の画質で高い評価を得たF10以来、どうもあか抜けない微妙なデザインが続いたが、今回の「FinePix F300EXR」はデザインもフルリニューアルしてきた。個人的には非常によいデザインになったと思う。曲面が多用され、全体に柔らかいイメージだ。
レンズは35ミリ換算24ミリ相当からの15倍ズーム。望遠端は360ミリ相当になる。今回の7機種ではもっとも高いズーム倍率で、それでいてボディはコンパクト。これが一番の特徴だ。
もうひとつ、このカメラには画期的な新機能がある。撮像素子である。1200万画素のスーパーCCDハニカムEXR――これは富士フイルム独自の構造を持つCCDなのであるが――になんとAFセンサーを埋め込んでしまったのだ。
デジタルカメラのAF機構にはコンパクトデジカメやミラーレス一眼が採用する「コントラストAF」と、一眼レフが採用する「位相差AF」がある。位相差AFは高速だが、AF専用センサーが必要なため、コンパクトデジカメには採用しづらかった。富士フイルムは位相差AF用のセンサーをCCD上に埋め込んでしまったのである。
で、結果はどうかというと、AFはコンデジ最速といっていいくらい速い。時間がかかりやすいマクロや望遠時でも速い。半押しをするとすっと合う。顔検出AF時はコントラストAFになるけれども、全体としては非常に速い。これは画期的だ。
ただ、気になる点がひとつ。ひとつは「電源をオンにするとフラッシュが必ずポップアップすること」。発光禁止にしててもとりあえずポップアップする。これはちょっとイヤかな。
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