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ワガママに応える26倍レンズ一体型ハイエンド――「FUJIFILM X-S1」(1/4 ページ)

» 2011年12月15日 11時00分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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 富士フイルムからデカいコンパクトデジカメがでた。いや誰が観ても「コンパクト」ではない訳で、なんと呼ぼう。かつて同社はこのタイプを「ネオ一眼」と名付けたけれど、それも定着しなかったしね。しかも、「FinePix」じゃなくて「FUJIFILM X」シリーズである。レンズ一体型ハイエンド高倍率ズームカメラとでもするか。それが「FUJIFILM X-S1」(以下「XS-1」)だ。

photo 「FUJIFILM X-S1」。レンズを着脱できても違和感がない一眼レフっぽいボディ。ここまで凝ったボディにしながら三脚穴がレンズの光軸上からずれているのは謎

 「FUJIFILM X10」(レビュー)と同じ2/3型CMOSセンサーを採用しており、これはキヤノン「PowerShot S100」やリコー「GR DIGITAL IV」といったハイエンドコンパクトに使われている1/1.7型より大きい。では、本体はどのくらいデカイいか。さらに大きな撮像素子を持つマイクロフォーサーズ機と並べてみた。14-140ミリを装着した「DMC-G3」と比べてもデカイのだ。

photo 左が4/3型センサー(マイクロフォーサーズ)の「DMC-G3」(EVFとポップアップストロボ内蔵)に28-280ミリ相当の10倍ズームレンズ。右は2/3型センサーを搭載するX-S1で、レンズは24-624ミリ相当の26倍ズームレンズ。レンズ径はほぼ同じ。X-S1が立派な体格をしてるのがよく分かる。手が小さな人だとかなりデカく感じるはず

 こんなにデカいレンズ一体型カメラに需要はあるのか。

 その辺を考えつつレビューしてみる。

24〜624ミリ相当の26倍ズームハイエンドなのだ

photophoto 正面から。レンズには「SUPER EBC FUJINON LENS」の銘が打たれている。フィルタ径は62ミリ(写真=左)、背面から。液晶(3インチ/46万画素)の左には、再生、AEモード、AFモード、ISO感度、WBと5つもボタンが並ぶ。(写真=右)

 何しろ、X-S1が搭載するのは35ミリ換算24〜624ミリ相当の26倍ズームである。F2.8-5.6と明るさも高倍率ズームとしては上々で、ワイド端ではレンズ前1センチまで寄れる。テレ端では2メートルだけど、実は500ミリ相当程度までならもっと寄れるので、テレマクロっぽい写真も撮れるのだ。何しろレンズ径が62ミリである。一眼レフなみ。

photo ズームリングを回すとメカニカルにレンズが伸びる手動式ズーム。素早く焦点距離を合わせられるので気持ちいい。レンズには35ミリ換算時の焦点距離が書いてある。ズームリングの奥にあるのはフォーカスリングでMF時に使う。フォーカスモードはレンズ脇のスイッチで
photo 真横から。内蔵ストロボは少し前にせり出す感じでポップアップする。広角端でのケラレを避けるためだろう

 撮像素子は前述の通り、X10と同じ2/3型 EXR CMOSセンサー。もっと安くてコンパクトな35倍ズームレンズなんてコンデジもあるけれども、それらの多くは1/2.3型。こっちはハイエンド機に使われる1/1.7型より一回り大きな2/3型。

 レンズの描写力が高いこともあり、超高倍率コンデジとは写りが格段に違うのがポイントだ。EXR CMOSセンサーは画素が斜めに並んでいて、通常撮影(HRモード)のほか、2画素混合でダイナミックレンジを上げたり(DRモード)、高感度時のノイズを減らしたり(SNモード)できる。裏面照射型ではないが、2/3型まで大きくなると裏面照射にするメリットがほとんどないので問題ないそうな。

 画素数は1200万画素で、2画素混合を行うときは半分の600万画素相当となる。1200万画素というのはよい案配だ。

 もともとの撮像素子サイズが大きいためISO感度やダイナミックレンジにも余裕があり、普段はHRモードで撮影すればいいだろう。DRモードやSNモードは、特にダイナミックレンジを広げたい、ノイズを減らしたいというというときだけ使えばよさそうだ。

 ボディはエントリー向けデジタル一眼レフ並で、ボディのそこら中にボタンがあるんじゃないかというくらいボタンが多い。ここまで多くなくてもいいんじゃね、という気がするくらい。

photo 上部には電子ダイヤル、撮影モードダイヤル、露出補正、連写、そしてFn1。ボタンが3つもあるのでEVFを覗きながら手探りで押すと間違いそう(というかよく間違った)。ボタンが多いのも良しあし。グリップ部にはシャッターと電源

 EVFとチルト式液晶モニタ(LCD)はセンサーによる自動切り替えで、感度はちょっと微妙。メガネをかけてEVFを覗くと、メガネの隙間から入った光でEVFからLCDに戻っちゃうこともあったくらい。感度の調整ができるとよかったかも。

photo 液晶モニタは上下に稼働する。右にはさらに多くのボタンがあり、「RAW」ボタンまである。SDカードスロットが底面ではなくサイドにあるのは使いやすくてよい

 残念なのは、ボタンがたくさんあっても、操作のリズムがFinePix的なこと。例えば、連写後にデータを書き込んでいる間など、処理が終わらないとボタンやダイヤルを操作しても反応しないことや、メニューの構成だ。

photo ディスプレイのINFO表示モード。中央の黒い枠はAF位置を示すもの。EVFを覗くと普通にライブビューとなる。一眼レフ的にEVFを覗いて撮る人向け。それはいいのだが、EXRオートのデフォルトがこの画面なのはどうかと思う
photo DISPボタンを押すと表示内容を変更できる。電子水準器を出すにはカスタム設定で電子水準器をオンにする必要がある。これもまたせっかくの機能なのにもったいない。そういうソフトウエア部分に改善の余地あり
photo MENUキーを押すと撮影メニュー。内容は撮影モードによって変わる。ダイナミックレンジやISO感度、WB、細かい画質調整も可能

photo ISO感度は、フルサイズではISO100から3200まで。さらにISOオート時の上限も4つから選べる
photo 連写ボタンを押すと多彩な連写モードが。ISO感度やフィルムシミュレーション、ダイナミックレンジのブラケットもある。連写速度は秒7コマと高速(画像サイズをMにすると秒10コマまで)
photo モードダイヤルを回すと画面上にも仮想ダイヤルが現れる。Adv.モードでは高速連写を生かした特殊な撮影モードが用意されている

 もうひとつ、三脚穴の位置が光軸の直下ではなくズレていること。ここまで「一眼レフっぽい本格派デザイン」を前面に押し出すならば、三脚穴の位置にまで気を配って欲しかった。画竜点睛を欠いたかな。

 では細かい機能や用途の広さは作例と一緒に。

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