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デジカメで培った画像処理が“意図ある3D”を実現する カシオ「デジタル絵画」2012 International CES(1/2 ページ)

» 2012年01月17日 18時16分 公開
[小山安博,ITmedia]

 世界最大級の家電見本市である2012 International CESにて、カシオ計算機は「デジタル絵画」の参考展示を行った。家電の見本市で「絵画」とは奇妙に聞こえるが、この「デジタル絵画」は、1995年にデジタルカメラ「QV-10」を投入したデジタルカメラの老舗である、同社の画像処理技術が根幹をなしている。

 その「デジタル絵画」とは一体何か。樫尾和雄社長とVP事業部長 執行役員の持永信之氏に話を聞いた。

photo カシオ計算機の樫尾和雄社長。背後にあるのが「デジタル絵画」

 同社の参考展示した「デジタル絵画」は、単純に絵画をスキャナなどでデジタル化するといった一般的な意味での「デジタル処理した絵画」ではない。平面で描かれた絵画からデジタル処理によって奥行きの情報を創造、付加して立体化し、新しい作品とすることを樫尾社長は「デジタル絵画」と表現する。

 具体的には、写真やCG、イラスト、絵画といった平面上に描かれた絵に対して画像解析技術を行い奥行き(厚み)を推測し、3Dプリンターで立体的な作品として出力する。樫尾社長は「写真家や画家が強調したい部分を3D化することで、新しい絵画が生まれるのではないか」と、その誕生のきっかけを説明する。

photo ゴッホの「ひまわり」をデジタル絵画で立体化したもの

 カシオはデジタルカメラを長年開発する中で、被写体認識や顔検出、画像からの主被写体切り抜きなど、さまざまな技術を蓄積している。「デジタル絵画」にはこの技術の一部が応用されており、元来平面であるデータから、奥行き(高さ)を推測するために使われている。

 1枚の画像をデジタル絵画として作り出す際には、被写体を認識し、作者の意図を踏まえて強調する部分を検出し、立体化するためのパラメータを設定し、それをプリントする、という流れになる。ちなみにすべての平面データに対して同様の変換をしているわけではなく、その内容によってパラメータを変えて作成している。

 2次元のデジタルデータを3次元化する際には、そのパターンをいくつか用意し、半自動的にパターンを組み合わせる。なぜ全自動ではなく半自動なのかは、「作者の意図を考慮して立体化する」ため、現在は半自動が最良という判断での措置であるが、樫尾社長は「作者の意図も含んだ形で自動で3次元化できる方向でやりたい」と、立体化技術への自信を見せている。

 同社が「デジタル絵画」を作成する際に利用を想定している出力機器(3Dプリンター)は2種類。コンテンツによって使うプリンターを変えているといい、一方は積層タイプ、もう一方は樹脂を膨らませるタイプだ。積層型の場合、既存の立体プリンターを応用し、石こうを粉末状にして何度も吹き付けることで立体化させている。

 もう一方の樹脂を膨らませるタイプは「まったく新しい」(持永氏)もので、吹き付けたカプセルを膨らませることで立体化させるというものだという。細かなテイストも再現できるようになっており、積層型の方は10センチ程度までのより大きな立体を作成できる代わりに、プリント品質としてはカプセルを膨らませる方が良くなるそうだ。

photo 積層型プリンタで大きく立体化したダルメシアン。鼻の部分が立体化によって強調されているのが分かるだろうか

 こうして立体化したデジタル絵画は、International CESの展示会場では額に入れられて展示されていた。額の内側にはランプが設置されており、よりきれいに見えるように配慮されており、光源があることによって、さらに浮かび上がる部分を表現できている、という。

photophoto CGからの「デジタル絵画」化。出力に積層型プリンタを選ぶか発泡型プリンタを選ぶかで雰囲気が大きく変わる

 樫尾社長は「写真家の方や画家の方が強調したい部分をある程度3D化して、よりきれいな画像を作っていきたい。それがデジタル絵画だと認識している」と話す。持永氏も、「今までは紙に印刷する、ディスプレイで見るといった表現方法があったが、いずれも2Dの表現。デジタル技術を駆使して、3D方向で新しい表現方法を加えようとした」と説明する。

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