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ハイクラスコンデジ総チェック(1)――カメラ本来の性能で勝負するハイクラス製品をピックアップする(1/2 ページ)

» 2012年03月22日 11時38分 公開
[荻窪圭,ITmedia]
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 最近、ハイクラスコンパクトが面白いよね、という話があり、それは確かにそうだよねと。価格帯的に競合するミラーレス一眼の普及とともに影が薄くなっていくかと思われていたジャンルだけど、最近にわかに注目を浴びているのだ。

 むしろ、従来のコンパクトデジカメがスマートフォンにつき上がられて、画質や性能よりも低価格&フルオート指向&高倍率&分かりやすさに走らざるを得なくなり、日常を手軽に記録するカメラとしてはそれでいいのだが、手頃なレンズ一体型カメラを欲する写真好きには物足りないものばかりになっていき、カメラ本来の性能・機能で勝負できるハイクラスの製品が求められるようになったのである。

 ミラーレス一眼のおかげかもしれない。コンデジと一眼レフの間をミラーレス一眼がぐいっと広げ、そこにハイクラスコンパクトが復活する余地ができたのだ。

 そこは普及型コンデジほど小さく・軽く・安くを追求しなくていいし、ミラーを搭載する一眼レフのようにデザインを制約する機構上の問題もない。その分自由なカメラを作れる市場であり、レンズ一体型ならではの個性的な製品が登場しだしたのである。

各社から5機種をピックアップ

 ハイクラスコンデジと一口にいってもいろいろとあるので、こんな風に考えてみた。

 実売価格は4〜6万円くらい。“コンパクト”であることも重視して、ボディが大きめの富士フイルムの「FUJIFILM X100」やキヤノンの「PowerShot G1 X」などは避け、もうちょっと気軽に持ち運んで撮れるものに絞ってみた。フルオート指向が強くなった昨今のコンデジに不満を持つ人のために、という感じ。

 レンズや撮像素子もそうだが、普及型コンパクトと一番違うのはやはり操作系。メニューを開いて十字キーで、という操作は最小限にして、できるだけダイヤルを使ってさっとセッティングできる機種がいい。ある程度凝った撮影が可能なのが条件だ。

 そこで取り上げたのは次の5モデル。

photo

 富士フイルムからは「FUJIFILM X10」。オリンパスからは「OLYMPUS XZ-1」。リコーからは「GR DIGITAL IV」。ニコンからは「COOLPIX P310」。キヤノンからは「PowerShot S100」。撮像素子サイズやレンズスペックはそれぞれ異なるけれども、なんとなく同じジャンルっぽい5台。これを並べてみるとちょっと面白い。

photo 左からPowershot S100、COOLPIX P310、GR DIGITAL IV、XZ-1、X10である。

 ボディが大きいX10から順番に機種紹介を。

富士フイルム「FUJIFILM X10」

 今回取り上げた中でいちばんゴツいのが「FUJIFILM X10」。撮像素子が2/3型と少々大きい上に光学ファインダーやホットシューを持つ分どうしても大きくなるのだが、銀塩フィルム時代のレンジファインダーカメラを意識すれば普通の大きさである。

photo 「FUJIFILM X10」

 その分重量もあるが、鉄っぽい質感とずっしり感の分、モノとしての安心感があるといって過言ではあるまい。ボディを見ると分かるとおり、クラシックな使い心地を目指しており、鏡胴を回転して繰り出すマニュアルズームレンズが電源を兼ねているし、上部には露出補正ダイヤルもある。

 手動式のズームレンズは電源連動。上部には露出補正専用のダイヤルがあり、背面にはクリック付の電子ダイヤルと十字キー周りのロータリーダイヤルが装備されている。ふんだんに用意されたボタンやダイヤル類がまたクラシカルでよい。

 このレンズは28〜112ミリ相当ながら、F2.0-2.8と望遠端での明るさは今回の5機種中、OLYMPUS XZ-1に次ぐスペックがすばらしい。ワイド端と望遠端の差が1段分しかないから気軽にズーミングできる。

 撮像素子は2/3型のCMOSセンサーで1200万画素。このセンサーは富士フイルムならではのEXR仕様になっているが、そこにはこだわらなくてよいと思う。普通に2/3型センサーで1200万画素、と思って使って構わないだろう。

オリンパス「OLYMPUS XZ-1」

 2011年初頭に登場したオリンパスの「OLYMPUS XZ-1」。同社のコンパクトデジカメの最上位モデルというより、PENのテイストや技術をレンズ一体型コンパクトに結実させたものだ。そのくらい同社のコンパクトとはワンランク違う製品に仕上がっている。

photo 「OLYMPUS XZ-1」

 ボディはやや大きめだが、センサーが1/1.63型とGR DIGITAL IVやPowerShot S100に比べてちょっとだけ大きい上レンズ径が大きく、上部にEVFも装着可能なアクセサリシューを搭載していることを考えるとむべなるかな。今回の5台では唯一、外付けEVFに対応したモデルというのはアドバンテージだ。

 広角系ズームデジカメであるが、注目すべきはレンズスペック。28-112ミリ相当で、F1.8-2.5なのだ。ワイド端でF1.8、望遠端でF2.5とその差は1段分。112ミリ相当でF2.5というのは破格の明るさで、さすがZUIKOブランドを冠しただけのことはある。NDフィルタを内蔵しているのでピーカンの空の下でもこれをオンにすれば絞り開放で撮ることが可能だ。

 カメラとしての機能もコンデジより、ミラーレス一眼のPENに近く、様々なマニュアル撮影機能に加え、PENならではのアートフィルタ機能も持っているし、操作系も鏡胴周りのコントロールリングを備えるなど個性的。

 レンズにコストがかかっているせいかやや高価だったが、1年たって価格もこなれてきた。レンズの明るさとアートフィルタの面白さを考えれば魅力的である。

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