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「D600は手軽なFXカメラ」――ニコンに聞く「フルサイズ」(前編)(1/2 ページ)

» 2012年11月29日 00時10分 公開
[野村シンヤ,ITmedia]
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 2012年、ニコンがフルサイズ(FXフォーマット)製品ラッシュを展開したのは記憶に新しい。プロ向けの「D4」を皮切りに、間髪入れずに約3630万画素の「D800」「D800E」をリリース。そして秋にフルサイズセンサーを搭載しながら価格を抑えた「D600」を発売。また、リニューアルを含めたFX対応レンズの新製品など、フルサイズ製品におけるラインアップの拡充はとどまるところを知らない。

 最新のD600をメインに、D4、D800といった製品とのカテゴリの違い、想定するユーザー層、またフルサイズに興味を持つユーザーに対してのメッセージを、商品企画を担当する石井弦一郎氏(ニコン 映像カンパニー マーケティング本部 第一マーケティング部 第一マーケティング課 マネジャー)に尋ねた。

photo 映像カンパニー マーケティング本部 第一マーケティング部 第一マーケティング課 マネジャー 石井弦一郎氏

FXカメラをもっと手軽に

━━まずは9月に発表された、「D600」のポジショニングから教えていただいてもよろしいでしょうか?

石井氏: 「どういったお客様に買っていただきたいのか」というところから、お話ししますと、企画の発端は――弊社としては35ミリフルサイズのことをFXサイズと呼んでおりますのでFXと呼ばせていただきますが――、FXカメラを使いたいけど、そうしたカメラが「大きい」「重い」「高価」などの理由で、“気になっていても移行できない”と感じている方へ、手に取って頂ける製品を作ることでした。

 いきなりFXという方もいらっしゃいますが、DX(APS-Cサイズセンサー搭載機)カメラである程度の経験を持つ方がFXに移行するにあたり、先ほど挙げたような問題というか、ギャップが存在しているという認識でした。そうした方への要望に応えるカメラとして、D600の企画がスタートしたのです。

 ですので、いきなりエントリーのお客様が使うというよりも、D7000やD300Sなど、DXカメラをお使いの方が、スムーズに使えるようなカメラへ仕上げたつもりです。

photo ニコン「D600」

━━ユーザーからの要望が強かったということですね。

石井氏: そうですが、お客様からの要望を待っていただけではなく、こちらからも積極的にリサーチしています。色々なところでマーケティング活動をしていますが、ワールドワイドでも、“もう少しだけトライしやすいFXカメラが欲しい”そういう声がよく耳に入るようになってきたというのもあって、それに対応するような形です。

━━これまでですと、D700がFXカメラで最も身近な機種という位置づけでしたが、やはり値段というハードルは高かったということでしょうか。

石井氏: やはり大きいですね。値段のことはあまり大きな声で言いたくはないのですが、現実問題として大きな障壁になっているのは事実だと思います。例えば「D800」は30万円するカメラですが、プロの道具というならばとにかく、趣味としてやるには30万円のカメラを買うということはこの時代、結構な勇気がいりますしね。

━━そこを価格を下げつつも、フルサイズの楽しみを伝えたいということでD600が登場したわけですね。

石井氏: D600はしっかりホールド、しっかりファインダーをのぞいて撮るという、今までの一眼レフのスタイルで違和感なく使え、かつ、フルサイズの良さをなるべくスポイルしないよう作っています。D800に比べれば確かに安価ですが、安いからチープでいいとなどとは一切考えていません。安価といっても20数万円するカメラですから、品質感というか、作りこみの部分には、かなり気を使って作ったつもりです。

 では「FXの良さは何か」というところなんですが、大きな撮像センサーがもたらす階調の豊かさとかディテールの細かさ、もしくは高感度画質ですね。こういったところはFXカメラならではの特色で、D600を手にされる方はおそらくその辺をお求めになりたい、ご希望されたいと思っています。この部分をスポイルしてしまったらFXというカメラを買う意味がなくなってしまうので、その部分は非常に気を付けました。

━━D800とD600は画像エンジンという部分では、ほぼ一緒なのでしょうか?

石井氏: 画像エンジンは「EXPEED 3」なので一緒ですね。撮像素子はD800が有効約3630万画素、D600が有効約2420万画素とまったく別物ですが。

━━スペック表からは分かりにくい部分で、D800とD600の違う部分としてどんなところがあるのでしょうか。

石井氏: 基本的にはまったくの別物と考えて頂いて良いかと思います。

 メカ部分の設計もD600とD800ではまったく異なり、この2モデルを並べて触れると分かるのですが、シャッターボタンの感触やシャッター音、ボタン類の操作感など、表には出てこない部分のモノの作りはまったく違います。D600はこうした感覚に作用する部分をD800に比べると頑張らずというか言うかオゴらず、その分、センサー部分に注力するという手法で作られています。

━━D7000が2010年に発売されてから2年経ちますが、そこから移行しようと考えたユーザーに対するアピールとしては、高感度で豊かな階調を味わえるといったところでしょうか。

石井氏: 高感度を使わないとFXは面白くないのかというと、決してそうではありません。通常のISO100とかISO200といった部分でも、D7000に比べて画素ピッチも大きいわけですから、色の階調が豊かです。普通の日常の人物撮影や風景撮影においても、肌の滑らかなグラデーションとか髪の毛一本一本の再現とか、または山々の木々とかそういった部分には差が出てきますね。

━━そこはDXとは別物ということですね。

石井氏: そこは比べて頂ければ分かると思います。だからこそみなさんFXカメラにあこがれるということなんですね。でも、「えー、30万円ですか……」と。そこにハードルがあったので、やはりそこをどうにかしたいといったところでしたね。

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