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第160回 都会の星空と赤道儀の関係(ご一緒に)今日から始めるデジカメ撮影術(1/3 ページ)

» 2013年01月17日 20時13分 公開
[荻窪圭,ITmedia]

 今回は普段とはちょっと違う展開なのである。いつもは「撮影術」としてテーマ別に写真撮影のコツなどを紹介しているのだけど、今回は皆さんと一緒に挑戦してみよう、という感じ。

 お題は「星空」。実は、わたし自身、星空をちゃんと撮るのは今回がはじめてなのだ。天体観測の趣味もないので星座もよく知らないのだ。

 でも、2011年に月食、2012年に日食、さらに月と木星と金星が一直線に並んだりと大ネタが続いたので撮ってみたのである。

photo 2011年12月の月食
photo 2012年5月の日食
photo 2012年3月の一直線

 おお、これは面白いぞ、と。

星は動いている

 そこである日、部屋の南にあるベランダからオリオン座がきれいに見えたので三脚を持ち出して撮ってみたのだ。

photo サムネイルだと真っ黒で何が映ってるんだよという感じなので、クリックして大きくして見てもらえるとうれしい。

 もっと星がたくさん見えるといいなとシャッタースピードをうんと遅くしてみたら、今度はこうなった。

photo

 考えてみたら当たり前の話である。地球は回っているのだ。10秒程度だと誤差の範囲内だけど、何10秒もシャッターを開いてると、地球は回っているものだから、星が流れて写るのである。

 じゃあ、たくさんの星がきれい写っている、夜空の写真を撮ってる人はどうやってるのか。「赤道儀」なる難しそうな名前の装置を使ってるのだ。これがあると地球の自転に合わせてカメラを逆に回転させてやることで、星を止めることができる(逆に、地面と夜空の両方を同時に撮ると、地面の方が流れて写る)のである。

 天体観測をしている人には当たり前の装置なのだけど、そこまで本格的にやりたいわけじゃない人はどうすればいいか。

 探してみたら、簡易赤道儀なるものを発見。そこそこの大きさでそこそこの価格で電池で動いて普通の三脚に装着できる。これなら使えるかも。

 今回選んだのは、天体望遠鏡やフィールドスコープ、双眼鏡でおなじみの日本メーカー「ビクセン」の「星空雲台ポラリエ」。文字通り、星空を撮るための雲台だ。ポラリエの見た目は「ずんぐりしたでかいカメラ」。妙にカメラっぽいので、ひとめでは「どう使えばいいのかさっぱり分からない」というシロモノだった。

photo 「星空雲台ポラリエ」 カメラっぽいデザインが面白い。隅に空いてる穴は「北極星が見えているとき、ここの穴の真ん中に北極星が来るようにセットすればOK」というもの

 重さは約740グラム(本体のみ)。これは軽い。一眼レフ1台分。カメラバッグにこれをいれるスペースを作るだけでいい。価格も実売価格で3万円台なので、趣味の範囲で買える金額だといえよう。

 ではポラリエの説明をする。そうすればだいたい、簡易赤道儀が何をしてくれるものなのか分かるはずだ。

 まず、単三形乾電池を2本いれ、続いて底面に三脚穴があるのでこれを三脚に装着する。 長時間露光を行うので、なるべくしっかりした三脚が望ましい。三脚の雲台は微妙に角度を調整する必要があるので、自由雲台よりはレバーで上下左右のコントロールをできるものがいい。三脚の足は全部伸ばすのではなく、1〜2段でとどめておき、センターポール(エレベーター)もあまり伸ばさないこと。その方が安定するから。マンフロットの「ジュニアギア雲台」があると最強。

 次にポラリエにカメラを取り付けるための雲台を装着する。2つのネジをゆるめてぱかっと外し、そこに雲台を装着。

photophoto フロントの円形部分をネジをゆるめてはずす。ここが微妙に回転して方向を合わせてくれるのだ(写真=左)、雲台を装着してふたたびセット、ネジをちゃんと締めること(写真=右)

 この雲台を取り付けた円盤部分が回転するので、雲台への装着と2つのネジ止めはしっかり行うこと。特に重いカメラをつけるときはしっかりと。途中でカメラの重みでお辞儀しては元も子もないから。今回使った雲台はベルボン「QHD-43」という私物。ここはボール式の自由雲台の方が便利。レバー式だとレバーが邪魔だし。

 ポラリエの装着が完了したら、ここからが重要なんだけど、ポラリエの向きをしっかり合わせる。

 一番いいのはポラリエについている「穴」から北極星が見える角度に三脚の雲台を調整する方法。

 だがしかし、今回は「東京で星空を撮るぞ」であるからして、明るい北極星ですらなかなか見えない。それに、部屋のベランダで星を撮ろうなんて無精すると、北側にベランダがない限り、北極星は見えません。

 そんなときはどうするか。

 角度と方向を数値で合わせてやればいいのである。北極星は「動かない星」であるから、北極星を中心にポラリエの回転部分が回る向きにセットすればいい。

 簡単にいえば、本体を南北に、仰角をほぼ北極星の角度(北半球なら現在地の緯度)に合わせるわけである。

 角度と方角。

 一応、ポラリエに方位磁石と簡易傾斜計はついているのだが、オプションの「ポーラメーター」をポラリエのアクセサリーシューに装着して測るのが一番ラク。角度を現在地の緯度に合わせ、方位磁石で方角を合わせ、水準器で水平を合わせるだけでOKだ。

photophoto 方位磁石を現在地の緯度に合わせた角度で固定し、水準器で水平をとりつつ南北を合わせる

 最終的にはこんな感じ。

photo

 こんな風に装着すれば完了。ポラリエの側面に簡易傾斜計がついてるのでこれで角度をだいたい合わせることができる。

 まあこの作業をするのはだいたい夜で、暗い場所なので懐中電灯あるいはそれっぽいライトは欠かせない。

 ポーラメーターがないときはどうするか。

 一応本体に傾斜計やコンパスはついてるけれども、せっかくなのでiPhoneを使ってみよう。傾斜計アプリ(写真はClinomater)と電子コンパスアプリ(写真はiOS付属アプリ)で合わせてやる。GPSを使えば現在地の緯度も細かく分かるので、そういう点でも便利。

photophoto スマホをつかってセッティングしてみる。この写真に写ってるのがマンフロットのジュニアギア雲台。角度を微調整できる

 ただ、スマホの電子コンパスや傾斜計はそれほど高精度ではなく、特に電子コンパスは周りに電磁気系のモノ(デジカメとかポラリエとか……)があるとズレやすいので調整しつつ、たとえばちょっと離れたところで方角が安定しているかチェックしたりしつつ設定するのがいい。

 まあ、望遠レンズを使わず、露光時間が1〜2分なら方角や角度は「ある程度合ってればOK」だ。

 ちなみにデジカメで長時間露光するときは、長時間露光ノイズ低減機構をオンにするが、これを使うと「1分撮影したら、残り1分かけてノイズを減らす」ということにもなりかねない。結果、撮影にすごく時間がかかるので根気と防寒はとても大事だ。

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