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デジタル処理は再現性から作品性へ――オリンパスデジタルだからできること(2/3 ページ)

» 2010年05月20日 10時06分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

――その変化を感じたのはいつごろでしょう

寺田氏: 製品で言えばE-410(2007年4月発売)(→永山昌克インタビュー連載:こんなに小さく軽く薄くしました――オリンパス「E-410」の開発者に聞く)を出したころでしょうか。デジタル一眼の製品価格が下がり、写真愛好家向け製品だけではなく、ファミリー向け製品も市場に認知されたころですね。そうしたファミリー向け製品は操作も簡単になり、ワンボタンで失敗なく撮れるのですが、写真教室などで感想を聞くと「もうひと味欲しい」という声も聞かれるようになりました。写真への接し方に、多様性が見られ始めた時期ともいえるかもしれません。

――ほかにも、そうした「多様性」に起因するリクエストから実装に及んだ機能はありますか。

寺田氏: いくつかありますが、代表的なものはE-PL1(→レビュー:よりライトに、よりスマートに――「OLYMPUS PEN Lite E-PL1」)に搭載された「ライブガイド」でしょう。これまでは写真用語を知らないとカメラの操作はできなかったのですが、ライブガイドは写真用語を使わず、自分のイメージに近い写真を撮ることができます。これはデジタルならではといえるでしょう。操作しやすさもライブガイドの狙いですが、言葉と写真のイメージを一致させるための機能です。

photophoto 「E-PL1」では写真用語が分からなくても「色の鮮やかさを変える」などの項目でさまざまなパラメータを調整できる

 ハイエンド系コンパクトデジカメにも適した機能とは思いますが、E-PL1は「いまコンパクトデジタルカメラを使っているけど、もうすこしきれいに、自分の意図を写真に込めたい」という人を狙っていますので、E-PL1から搭載することにしました。

――アートフィルターはその種類によって処理に時間がかかるものもあります。処理速度は今後改善されるのでしょうか。また、どのよう基準で種類を選んでいるのでしょう。

赤松氏: 処理速度については現在も取り組みを進めています。ですが、作品性について妥協はできないので、やみくもに処理速度を速めることが第一ではないと考えています。選択については、E-30で用意した6種類はメッセージとして伝わりやすいもの、E-P2で追加されたジオラマとクロスプロセスについてはブログなどでのリクエスト、E-PL1については製品テーマが「初めての一眼」なので、E-PL1では初めて一眼を使われる方にとっても楽しんでいただけるよう、それまでの8種類の中から人気のあったものプラスに加え、作品性を持たせる要素として、作品性豊かに仕上がるジェントルセピアを是非体験していただきたいと思い、今回がいいのではないかと選択しました。

photophoto アートフィルター「クロスプロセス」適用例

寺田氏: アートフィルターについては、従来からの撮影技法を模したもの、デジタル処理ならではのものなど、さまざまな種類が考えられますが、「アートフィルターってこんなもの」という固定観念を持って欲しくないとは考えています。

撮りたい写真のイメージだけあればいい

――そもそもですが、なぜアートフィルターは搭載されたのでしょう。

寺田氏: 市場の予測、開発の伸びしろ、その2つが一致した結果といえます。「全部オートできれいに」がある程度実現したところで個性をプラスしたいと考えた開発陣の思惑と、E-410のころから写真教室などで気軽に作品性が与えられればという声をキャッチした商品企画陣の思惑が一致したのです。

 写真教室などではよく雰囲気の話になります。“人に見せるならば、よい写真”は誰でも思うのですが、よい写真は人それぞれですから、雰囲気を気軽に組み込めないかを考えたのです。「明るい」のひと言でも、写真を明るく撮る方法はいろいろありますし、正確にはシャッタースピードと絞りと露出の関係を理解する必要があります。ですが、「楽しく撮りたい」人にとっては知らなくてもいいことなんです。

 カメラに詳しい人に話を聞くと、実はね……と話してしまう。でも、それでは「分からない」「難しそう」と敬遠してしまう人もいるのです。「よい写真」をとることは、難しいことを知らなくてもいいのです。

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